その少年は顔にまだあどけなさを残しながらも意志の強さを宿す鋭い眼差しに、
月光に負けぬ太陽を思わせる輝く明るい髪の色をしていた。

「・・・そうか。そなたは『太陽の申し子』であったのか。
 ならば、人買共に狙われるのも仕方のないことだ。」







『 太陽 の 申し子 』





「俺は・・・この髪のせいで、生まれた時からずっと変な大人達に囚われ続けていた。

 何年もかけて、やっと、やっとあそこから逃げ出せたのに、すぐに人買いに捕まったんだ。

 髪の色が珍しいだけなのに・・・この世界に、俺の居場所なんて、どこにもないんだ・・・」

「・・・・・」

己の不遇な宿命に肩震わせ俯く少年を見下ろし、魔女はしばし思案した。
見た所少年はまだ10年も生きていない幼さだが、長くひどい環境にあったせいか話し方は疲れた大人を思わせる。
確か隣町のとある宗教集団が『太陽の申し子』の少年を教祖に祭り上げていたが、少し前にその教祖様が逃げ出したという噂を聞いた。
こんな近場で『太陽の申し子』が二人といるはずもなく、事態を察した魔女はふっと微笑み少年の顎に手をそえ顔を上げさせた。

「ええい!いつまでも男が泣くでない!!

 私はルキア。あの山の頂に住んでいる。

 『死神魔女』と呼ばれておるが、悪人以外殺しはせぬ。そなたの名は?」

「お、俺は、俺の名は・・・・・一護。」

「一護!一護か。なかなか良い名ではないか。

 それでは一護。早速だが私の弟子にならぬか?」

「えっ!?」

「そなたはまだ幼い。力ないままではまたすぐに捕まってしまうであろう?

 私の所で魔術を学び、一人前に成長したら、その足でお前の望む世界を見つければいい。それでどうだ?」


涙に濡れた一護の頬を拭い、ルキアは安心させるように微笑んだ。
月に照らし出されたその笑顔の眩しさに自然と胸が高鳴り顔が赤くなるのを感じながら、ルキアの思いに応えようと一護は叫ぶ。


「お、俺!今は何も出来ないけど、絶対ルキアの役に立ってみせるから!!」

「わかったわかった。そう急くともそれ相応の働きはしてもらおう。

 それから私のことはルキアではなく師匠と呼ぶのだぞ。

 さて、話が決まれば立ち話はこの辺にしておこう。

 今のお前には早急に風呂と飯が必要であろう。」


返答に答えるかのように、絶妙のタイミングで一護の腹がぐーっとなる。

ルキアくくっと喉奥でしのび笑い何もなに空間から厚手のマントを取り出し、
やせ細った一護の体をしっかりと包みながらほうきへ跨らせ、

一護を後ろへ座らせルキアの細すぎる腰に手を巻きつけさせた。

「山頂はまだ寒いからマントの前は締めて、落ちぬようしっかりと掴まれ。・・・では、行くぞ。」

「うん!」


こうして幼き少年一護は、死神魔女のルキアに育てられることになった。

当然成長した一護が人間世界へ戻ることなく、魔女ルキアを愛し共に生きることになるのだが、それはもう少しだけ先のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『MOON』>

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 2018.8.6

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