電車とバスを乗り継ぎ数時間。
ここは、空座町から遠く離れた山間にひっそりと佇む温泉宿。
そんな小さな温泉街に死神代行である黒崎一護と、死神である朽木ルキアの姿はあった。
死神任務に休暇をもらい旅行に来た二人は、仲居に案内され部屋に通された途端、
目の中に飛び込んできた窓の向こうに広がる紅葉に色づく木々にルキアは無邪気に大きな声を張り上げた。

「見ろ!一護!なんとも美しい景色ではないか!!」

「んな大声出さなくても、こっからでも見えるって・・・・・」






『 暴走青春温泉編 』  前編





子供のようにはしゃぎ窓に駆け寄るルキアを尻目に、一護が気恥ずかしげに荷物を下ろせば、
微笑ましい若いカップルに茶の支度をしていた仲居はくすくすと優しい笑みをこぼす。

「お気に召して頂けて良かったです。
ここいら辺は静かな景色を楽しむ意外、なにもない所ですから・・・とても可愛らしい彼女さんですね。」

「え!?あ・・いやっ・・・!あの・・まぁ・・・・・」

早々に窓を開けすぐそこを流れる川のせせらぎと山間を渡る涼やかな空気に触れ歓声をあげ続けるルキアの後ろで、
仲居の言葉に一護は赤い顔で固定も否定も出来ずにいる。
可愛い彼女。
そんな事は十分に承知しているが、一護が笑って『そうなんですよ。』など言えるわけもない。
しかし誰よりも強くそう思っている一護としては、ルキアとちゃんとしたカップルに見られている事がひどく嬉しい反面、
旅先で開放的になっているせいか緩みがちになる表情を引き締めるべく、いつもより余計深く眉間の皺を刻んでしまう。
仲居が去って二人きりになり、渋い表情で一護が茶を啜っていると、ひとしきり騒ぎ疲れたルキアは一護の側へと駆け寄った。

「どうした一護。随分渋い茶を啜っているようだが?」

「なっ!?なんだ!お。驚かすんじゃねぇよ!!」

「なんだその反応は。普通に話しかけただけではないか。
このような事で驚くなど、よほど気が緩んでいるせいか、よからぬ事を思い巡らしている証拠であるぞ。」

ギクッ!

そのどちらも大当たりなだけに一護は咄嗟に無言で胸を押さえるが、ルキアは気にした風もなく元気に立ち上がる。

「まあ良い。貴様も旅先で少々浮かれておるのだな?それは私も同じ事。
なぁ一護。夕飯までに時間もある。紅葉が綺麗で今が見頃だそうだ。紅葉見物を兼ね、少々散歩でもしてこぬか?」

「お、おぉ。そうだな。散歩、でもしてくるか・・・・・・」

「よし!では行こう!」

「ルキ・・・!おい、こら!その自分だけ勝手に走り出すクセやめろって!」

これ以上妙な詮索を受けぬうちにルキアの願いを聞いた方が得策であると、一護もすぐにも立ち上がるが、
ルキアは既に部屋から飛び出し一護も急ぎ追いかけて出て行った。

 

 

 

 

 

短い散歩から戻ると二人は早速大浴場で温泉を楽しみ、その後ゆかた姿で揃って夕飯の準備してある大広間へと移動した。
ここはバイキング形式の夕飯で、好きなものをお腹いっぱいになるまで詰め込み大満足で部屋へと戻れば、
部屋には布団が二組ぴったりと寄り添うように敷かれており、その様子に一護は硬直しごくりと喉をならしてしまう。
しかしルキアは呑気なもので満足そうに足を投げ出し、座布団と丸め抱えるとだらしなく畳の床へと寝そべった。

「はぁ〜極楽だ・・・美しい景色を眺め、温泉に入り、おいしい料理を堪能出来た。
これも一護が福引で温泉を当ててくれたお陰だな!」

「お・・おぉ・・・まぁ、そう・・だな・・・」

実入りの良い短期バイトをバリバリ稼ぎ旅費を稼いだのは内緒なので、一護はこれをもそもそと言葉を濁す。
ルキアはリモコンで備え付けのテレビをつけ、次々にチャンネルを変えながら夢見心地に声を弾ませる。

「折角温泉に来たのだ。もう少し休んだら、また風呂へ行ってこよう。
今度は大浴場の露天風呂も楽しみたい。一護。お前もまた、風呂へ行くのだろう?」

どくっ

ルキアの何気ないこの一言に一護は秘かに過剰なまでに反応しており、しばらくそわそわした挙句、
ルキアの方は見れず、明後日の方向に視線を彷徨わせながら勇気を持って口を開く。

「あ・・・あー・・・そ、そーいや、ここ、内風呂で露天が、あるんだな。」

自然を意識するだけ不自然になる一護の声はやや上擦るが、ルキアは素直に驚いた。

「内風呂の露天?ここにはそんなものまであるのか?それは是非入っていかねばなるまいなっ!」

きたっ!

最大のチャンスに一護は秘かに気を静め、出来るだけ平静さを装いながら、頭の中に用意していた言葉を思い切って口にした。


「一緒に、入るか?」


それはルキアと温泉に行こうと計画した時から膨らんだ願望。
一護は恥ずかしさをひた隠し決死の思いでルキアを風呂へと誘ったのだが、言われたルキアは一瞬ぽかんとした後、
見る間に顔を赤く染め、寝転んでいた体勢から慌てて飛び起き、手にした座布団を固く抱き締め噛み付くように叫ぶ。

「な、何故だ!?」

「・・・・・・・・・何故って、なんだよ?」

「何故、私が貴様と一緒に風呂に入らねばならぬ必要性があるのだ!?」

恥ずかしがって拒まれる事は想定内だったが、二人で風呂に入る事についての必要性を問われるとは思わなかった。
元々恥ずかしいのを無理に気力をあげていただけに、これに一護は完全にやる気を失い、思い切りルキアから顔を背ける。

「な、なんでもねぇよ!嘘だ嘘!ちょ、ちょっとした冗談だ!
お前は、大浴場でもなんでも行ってこいよ!!」

「・・・・・・・・・・・・・」

気まずい雰囲気に一護はいたたまれず、何も言わぬルキアに背を向け早々に風呂場へと逃げ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

やっぱダメだな。

ガラじゃねぇこと、するもんじゃねぇ。

こじんまりとした檜作りの風呂に沈み、一護は湯を掬い上げばしゃばしゃと顔を洗い深い深い溜息をついた。
湯は露天ということもありやや熱めに設定してあるが、吹く夜風が肌に心地よく、一護は目の前に広がる川を眺めまたしても溜息をつく。

一緒に風呂に入ろうと誘うなんて、自分のキャラじゃないことは百も承知だ。
それでも旅先で浮かれた気分もあり、またルキアとならば一緒に様々な事を経験してみたい若い好奇心もあった。
折角温泉に来たんだ。部屋に風呂があるのなら、好きな女と一緒に入ってみたいと思うのは別段変わった趣向ではないはずだ。
しかし、先程のやり取りを思い返すと、恥ずかしさに一護は叫びだしたいようないたたまれない気持ちで一杯になり、
この後どんな顔をしてルキアと会わねばならないのだろうと、重い気持ちで湯船の中に顔半分まで沈んでいく。

その時、後ろからガララッと扉が引かれる音がした。

「!?なんっ・・・・・・・!」

音に驚き慌てて顔を上げ振り向いた視線の先には、襟足がが濡れぬように髪をまとめ上げ、バスタオルで体を包み気恥ずかしげに視線を伏せたルキアが立っていた。
思ってもない展開に、一護は言葉もなくルキアにただ見惚れてしまう。
しかしルキアは、赤い顔を背け怒ったように語気を強めた。

「・・・・・何をジロジロ見ておる!向こうを向いておれ!」

「あっ・・・あ、ああ・・・・・悪りぃ・・・・・・・・」

自分は余程間抜けな表情であっただろう。
一護は顔ごと思い切り背けて視線を逸らせば、後ろのルキアがそっと動き出す気配を感じる。
桶を拾い湯船から湯を掬い幾度か体にかけ流して後、おずおずと湯船に足を浸す様子が一護の視界の先に映り、思わず一護はルキアの方へと視線を移す。

「こっちを見るなっ!」

「〜〜〜〜〜〜!!」

またしても怒鳴られ、一護は慌てて顔を背けた。
しかし、どんなに視線を逸らしても狭い湯船の中、視界の端にはルキアの体が確認でき、気になって仕方が無い。
突然の幸運に一護の胸は煩いまでに高鳴り続けている。
そうこうしているうちに、無事ルキアも湯の中に体を沈ませ、しばしの間川のせせらぎしか聞こえない完全な沈黙が二人を制していた。

「・・・もう、そっち、見てもいいか?」

「・・・・・・!あ・・・・あぁ・・・・よ・・・良い・・ぞ・・・・・・」

互いに顔を背けたまま、黙って湯に浸かりのぼせるのを待つのは妙であろう。
さすがにそう思ったのか、ルキアが戒めを解除すれば、やっと一護はルキアへと視線を向けた。

普段は隠れたうなじが露わにし、白い肌をほんのりと赤く染め、困ったような顔で俯いているルキアの様子に、一護の心にゆらりと欲情の火が灯る。
本当は、もっとゆっくり二人で温泉に来れた事を楽しめたら良いと思っていたのに。

今、一護の胸にあるのは、旅先でいつもと違うシチュエーションに燃え盛る若い衝動。
その衝動が一護へと囁きかける。

『ルキアを、抱き寄せろ』と。

一護は逆らう意志もなくその衝動に付き従い、手を伸ばしルキアの手を掴むと自分の方へと引き寄せ抱きしめた。

「・・・・・・・あっ!」

じゃぷっと湯が跳ね、波紋が広がる。
ルキアはか細い叫びを小さくあげると、引かれた先にある一護の濡れた胸の中へと倒れこみ、茹ったように真っ赤になった。

「な、なにをしておる!こ、これでは・・・ゆっくり温泉が楽しめんだろう・・・・・!」

「そうか?俺は、充分楽しんでるけどな。」

「そ、それは貴様だけで・・・・・んむっ・・・・・・!」

わざと怒ったように上を向いたルキアの唇は、それ以上の言葉を紡げず塞がれる。
一護の、唇で。
ルキアの肩を遠慮がちに抱いていた一護の手は、力強くルキアを抱き締め、ルキアを覆うバスタオルを外し浴槽の外へと放り出す。
湯の中で素肌で抱き合い激しく交わす口付けにすぐにルキアは朦朧となり、やっと唇を解放されるとはぁはぁと息を荒げた。

「タ・・・タオルを・・・返せ・・・・!」

「タオルを風呂ん中に入れないのは、常識だろ?」

「し、しかし、これでは・・・・・!」

「いいだろ?もう、必要ないんだし・・・・・・」

「ああっ!・・・い・・・一護ぉ・・・・・・!んくぅ・・んんっ!」

胸を覆い隠した両腕を掴み開かせ、一護は小さな胸へと吸い付いた。
先程のキスで興奮したのか、可憐な胸の蕾は既に固く尖り、一護はそれを丁寧に吸い付き口の中で舐め転がす。
そうされてしまえばルキアも無駄な抵抗をする気も起きず、二人の動きに合わせ発生するちゃぷちゃぷとした小さな水音を聞きながら、甘く蕩けた声を控えめに上げた。温泉効果か普段以上に滑らかな肌の胸を充分に舐め上げてから、一護は胸元に幾つかのキス跡を残し、それから白いうなじに吸い付く。
首筋を舐めながら両手で胸を揉みしだけば、ルキアの口から上がる声は、なお一層の艶と切なさを増していく。
白く華奢な体を火照らせ、温泉に熱くなる肌はキス跡をより一層赤く浮かび上がらせた。
ルキアは潤んだ瞳で物言いたげに熱く一護を見つめる。
ルキアを濡らす湯とも汗ともつかぬ雫ごと肌を舐め、一護はたまらず先程とは違う熱い吐息で溜息をついた。

「わり、ルキア。もう、いいか?」

「えっ?だって・・こ、ここで?」

「もう、我慢・・・できねぇんだ。」

答えを聞かぬうちにルキアを自分の上に跨るように体制を整え、興奮に固くそそり立つ自分自身をルキアの中へゆっくりと沈ませていく。

「んんっ・・・!あっ!・・・はぁっ・・・んっ・・・!ふっ・・・あ、ついぃ・・・・・!!」

一護のそれと一緒に中にお湯まで入ってきたようで、中心を叩く熱と立ち上る湯気と欲情に全身を燃えさせ、
ルキアはふるふると震えながら必死になって一護にしがみつく。
最初は探るようにゆるやかに動かしていた一護の腰の動きも段々早まり、それに合わせて湯船かザプザプと音を立て溢れる。
浮力にふわふわと動く体のバランスをとりながら、ルキアは自分の奥を叩く熱い肉棒を感じ悶えた。
それは夜の静けさを乱し、どれだけ激しく互いを求め合っているのか周囲へ公言しているようでもあり、
その恥ずかしさと熱い湯の中での情事に完全にのぼせそうになったルキアは叫ぶようにこれを止めた。

「だ・・・だめっ!一護!こ、これ以上は・・・のぼせて、しまう・・・!」

「少し・・我慢しろ。俺・・・・・」

「お、お願い!続きは・・布団で・・・ちゃんと、して・・・・・」

ジャパジャパと派手に湯が弾ける音をさせながら、一護の腰は動く事をやめない。
このままでは極めたと同時に湯にあてられ倒れてしまいそうな不安に、ルキアは一護の頬を小さな両手で包み、
熱に潤んだ大きな瞳を切なげに曇らせ、甘えるように一護にねだる。
こんな顔でせがまれ、一護が無視できるわけがない。
一護の動きが止むと同時に湯船にも静けさが戻り、互いに激しく息を弾ませながら一護が小さく呟く。

「・・・・・・・あがるか。」

一護を深々と中に収めたままルキアも激しく息を上げ、一護の胸に寄りかかりながらこくりと小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※随分前にダリちんさんからリクエスト頂いておりました。イチルキ温泉お泊りエッチ☆
温泉ネタってよそさまではよく見る設定ではありましたが、自分で考えてみるとこれがなかなかに難しい!?
温泉って設定を活かしきれないとゆーか、最初考えたのはただのお泊りエッチに過ぎないしなーうーん・・・とか。
そんな高いクオリティは全然求められてないはずだ!と自分つっこみを入れつつ、それでもなんとか温泉とゆー特異性をなにか設定に盛り込みたいと無駄に頑張る。
その結果がお風呂エッチ。ギンならお家でも躊躇なくしてそうだけど、一護は特別に奮うロケーションでもなければそうそうに出来そうにないかなーと妄想してみました。
2009.11.10

material by Sweety

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