※この作品は『銀紫のお茶会』のkokurikoさんが表での『絶対家族!特別編』の『裏版』(私)の続編『朽木邸夜編』です。(表作品は『宝蔵』→『作品展示場』→『絶対家族特別編』
まさかまさかかつてのコラボ作品の続編が裏として読めるだなんて!2013年はなにかいいことありそうな!?(まずはお年玉に素敵作品頂けた事がいいことなんだけど!)
強く美しい義兄の目光る朽木邸にてギンがどうルキアに挑むのか!?本当にありがとうkokurikoさん!耽美なkokuriko裏劇場のはじまりまじまり〜♪

           『絶対家族(特別編)』―朽木邸夜編

 

 

今年の安泰を約束するかのように煌々と輝く満月が空にかかる新年の夜。

ここは瀞霊廷の中でも一,二を争うほど広大な敷地面積と豪奢な屋敷を構える四大貴族当主の住まう朽木邸。

昼間の朽木家主催の盛大な新年の園遊会も終わり,身内だけの食事会も滞り無く終え,入浴を済ませた市丸一家は毎年恒例のルキアの里帰りも兼ねた朽木邸での宿泊のために用意されている豪華だが落ち着いた雰囲気の和室で団欒のひとときを過ごした。そして,就寝時間も過ぎた頃,ギンとルキアはすでに敷かれていた絹布団に愛しくも憎らしい(レンのみ)子供たちを挟むように寝かしつけ,静かに幸せな眠りにおちていった……はずだった。

 

当主の義妹としての挨拶や対応に追われ,疲れが出たのだろうかぐっすりと眠っていたルキアは,己の耳元に吹き込まれる吐息と全身を撫で回される感触にゆっくりと意識を呼び覚まされた。

耳元がくすぐったい。首筋にやわらかく絖やかな感触がする。胸が温かなものに包まれ,ふわふわと揉みしだかれている。不意に優しく飾りを摘まれ,思わず甘い喘ぎが唇からこぼれる。

 

(ん…?気持ちいい……)

 

夢見心地のままに心地よい感触に身を委ねていたルキアは,襦袢をはだけられ裾を割られた瞬間のひやりとした冷気に不意に覚醒した。

 

「…ん!なに……え?」

 

薄闇の中,体重をかけないように自分に覆いかぶさっている見知った長身の影が,くくっといつもの嗤いをもらした。

 

「あ,起きたん?起きんでも続けよ思うとったんやけど,起きたからには一応ちゃんと言うとかんとなあ。しよ,ルキアちゃん」

 

「な…!!??ぎ…ギン……っ!?きゃぁ……んむぅ!?」

 

よく見ると布団は剥がされ,薄い襦袢の前は大きくはだけられ,小ぶりな胸は飾りだけをやっと隠している状態にされ,ゆるく解かれた腰紐は着物の抑えの役割を果たしておらず,裾も大きく広げられルキアのほっそりとした白い足は太腿のところまで露わにされているではないか。その見えそうで見えないいやらしくも,あられもない格好にルキアは思わず抑えた悲鳴を上げかけ,慌てて口を抑えた。

 

「な,何をしている?兄様の屋敷で不埒な真似は許さぬと,私はいつも言っているはずだ!」

 

声をひそめながら下から睨みつけてくる愛らしいルキアの視線を楽しげに受け止めながらギンはしれっと言い放った。

 

「そないなこと言われても,昼間あないに挑発されたら受けて立たんわけにはいかんやない?」

 

「わ,私がいつ挑発をしたと!」

 

昼間の情事のことを思い出し,頬を赤らめるルキアの耳元に再び唇を寄せ歌うようにギンは囁いた。

 

「まあ,正確にはキミやないんやけど♪」

 

「え?」

 

そう,挑発したのはルキアの義兄朽木白哉,昼間のおいたのせいでルキアから受けた平手打ちで左頬に紅々とした小さな手形が残っていたギンに,白扇に見事な手でしたためられ,白哉から手向けられた歌。

 

『咲き誇る 白き牡丹のひらうけて 片羽の胡蝶 羽を伸ばせじ』

 

『咲き誇る大輪の雪白の牡丹の花びらが邪魔をして,羽を閉じて片羽のように見える蝶は羽を伸ばし飛び立つことができぬようです』つまり,我が妹の平手打ちを片頬に受けて牽制された以上,どうやら今日はハメを外すことはできないようだな…と解釈できる妻の尻に敷かれたギンをからかった戯歌。

ギンは昼間,白哉から受け取った白扇をルキアに見せながら経緯を簡単に説明し,にやにやと笑った。

 

「と,言う訳なんよ」

 

白哉はルキアの牽制にさらにダメ押しをしたつもりであろうが,ルキアを溺愛する義兄にここまで言われて,この屋敷でコトを起こさないなどとギンが思わぬはずはないというのに…完全に裏目に出てしまった義兄の子供っぽさとギンの負けず嫌いにルキアは唖然とするしかなかった。

 

「……そんな理由で…この大たわけ!」

 

「ん――お義兄さまの挑発に乗って,ボクがルキアちゃんを可愛がるなんて言うのがそんなに嫌なん?」

 

「―――っ!!ばっ…!」

 

若干の図星があったのかルキアは一瞬つまりギンを睨みつける。そんな可愛らしい反応の愛妻に,つい素直な言葉がギンのくちを継ぐ。

 

「安心してや,挑発なんかされんかてボクはいつだってルキアちゃんと愛し合いたいんやよ。昼間,あんなに可愛らしゅうて色っぽいルキアちゃんを見たら,我慢できるわけないやん?むしろ夜までよおもった方やと思わん?」

 

そう,ここまで挑発されたからには受けて立たねば男ではない,というのは建前でギンは昼間から本当は朽木家でルキアに挑む気満々であったのだ。

 

「そ,そういうことを言っておるのではない!!」

 

優しく頬を撫でられ愛おしげに紡がれる口説き文句。

夫婦となって,はや数十年も経つというのに相変わらずの真っ直ぐな愛の言葉,壊れるほどに求めてくる熱く甘やかな夫婦の営み。

必死で怒った顔を維持しながらルキアは真っ赤になって熱っぽいギンの視線をかわす。

 

(だ,ダメだ…また流されては……)

 

確かにギンの変わらぬ愛情は嬉しいが,ここは朽木家の屋敷であり,そばに子供たちも眠っているのだ。断じて受け容れるわけには行かない。

 

「と,とにかく,私はこんな不埒を許した覚えはないぞ!だいたいお前はいつも…っ…むぐぅ…んぅ!」

 

抗議する愛妻の花びらのような唇を待っていたかのようにギンは唇で塞ぎ,叱責の言葉を紡ぐために開かれていた口内に熱い舌を潜りこませた。ギンの滑らかな熱い舌がルキアの小さな舌を絡めとり優しく吸い上げる。呼吸を奪うような激しくも優しい,誘うような甘いくちづけはルキアの儚い抵抗をいつも封じてしまう。

昼間激しく抱かれた熱は,実はルキアだとて収まりきっていたわけではなかったのだ。その気などなかったはずなのに,いつの間にかルキアも求めるようにギンの舌に舌を絡ませ情熱的に唇を吸い返していた。貪るように互いの唾液を吸い合いながら,なお溢れた唾液が銀色に光りながらルキアの顎を伝う。

激しく求め合う淫らな水音が静かな閨に響き渡る。

 

「ん…はふぅ……んん……」

 

「……ん…っ…は……ぁ…ルキアちゃん…」

 

甘いくちづけの合間に漏れる互いの吐息に酔いしれながらも,ようやく名残惜し気に唇を離し,ルキアの唇から伝う互いの唾液を惜しむように舐め上げると,ギンは嬉しげに涙の滲む綺麗な藍紫の瞳を開眼した切れ長の瞳で見つめ返した。

 

「やっぱりルキアちゃんもしたかったんやね。眠りながらでも,ええ声出してくれてたんやで。子供たちが起きんかとボクでも心配になるくらいなぁ」

 

「な…!?」

 

確かに夢心地のままに与えられていた刺激に反応していたような気がするが声まで出していたとは…ルキアは眠っている間のこととはいえ己のはしたないさまを想像し,羞恥のあまり思わずはだけられた襦袢をかき抱こうとしたがその腕はギンにやんわりと止められる。

 

「ああ,あかんよ。そのかっこ,めっちゃエロくて美味しそうやし,それにこの屋敷で用意された肌着着ているキミを見とったら,なんや朽木家にまだ居た頃のキミを夜這いに来たみたいで,えらいそそるんよ。もう少しそのまままで居てくれん?」

 

「よ!夜這い…」

 

唖然とする愛妻の頬にちゅと軽くくちづけを落としながらギンは笑う。

熱く猛る思いのままに精巧な人形のような儚げな美貌のルキアをギンは舐めるように見つめた。自分が乱したとはいえ,しどけなく白い肌襦袢を乱しているルキアの姿はあまりにも美しかった。

広げられた袷から覗く血管が透けて見えそうなほど薄く透明な肌は闇にも白く淡く輝き,綺麗な鎖骨と小ぶりだが愛らしい胸が微かな谷間をかいま見せすぐさま己のものである赤い花びらの痕を付けたくて堪らない。裾を乱され解けかけた帯を絡ませながら無防備に晒された輝くような白い足はそのままつま先から口に含み舐めしゃぶりたいほど倒錯的な思いを煽り立てる。そして,そんな挑発的な姿であるにもかかわらず微かに怯えを滲ませた潤んだ瞳でギンを見上げ微かに震えている可憐なルキアの清楚な所作は,我知らず喉を鳴らすほど,とてつもなく扇情的であった。

場所が朽木低と言うのも美味しすぎる設定だ。

 

「ボク,ずっと夢見とったんや。朽木家に偲んでいって,お義兄様の目ぇ盗んでキミと愛し合いたいって…今夜夢がかなうなんて嬉しいわぁ!」

 

「貴様,交際中にそんなことを考えていたのか?」

 

ギンの笑顔にいたずらっ子のような,それでいてひどく淫らな甘さが交じる。

 

「こういう設定を想像しながらするのって萌えるやろ?」

 

「な…何を馬鹿なことを!」

 

「それに昼間は下ばっか可愛がってしもうたから,今夜はたっぷりルキアちゃんの胸を可愛いがってあげんとなぁ。こんままやとルキアちゃんの可愛えおっぱいが拗ねてまうやろ?」

 

「た,たわけ!!胸が拗ねるわけなかろう!!」

 

「何言うとるの?こないにここ固くしてボクこと待っとったくせに…」

 

ギンは薄絹の襦袢越しにルキアの飾りにふうっと吐息を吹きかけ,指先で軽くつつく。

 

「あっ!あぁ…んっ!」

 

それだけで上がる愛妻の甘い啼き声,布越しの軽めの愛撫だけで嬉しげに固く尖る超高感度のルキアの胸にギンはにんまりとほくそ笑む。

 

「ほんまにルキアちゃんの胸は素直で可愛らしいなあ♪大好きや…」

 

本格的に愛してあげようと袷にギンの指が再びのびた瞬間,ルキアははっとしてその手をはらうと胸元を掻き合せる。隣で安らかに眠る子供たちの寝顔が理性を引き戻す。

 

「んっ!……だめ…だ…レンとゆなが……」

 

「子供らが気になるん?じゃあ隣行こか?」

 

「し,しかし…」

 

事も無げに誘いの手を緩めない夫の主張にルキアは言葉を濁す。

確かに朽木邸で市丸一家に供された客間は広々とした二間であった。しかしいくら広いとはいえ隔てるものは薄い襖のみである。昼間の歌留多遊びの声のない静寂な時間に隣室に声が漏れぬ訳もない。

 

「嫌ならここでするで。ええの?」

 

ルキアの不安げな表情には構わず,甘さを滲ませながらも有無を言わさぬギンの口調に,こうなった以上,止まらぬ夫の性格はよくわかっているルキアはせめて子供たちの傍らで愛し合うことだけは避けようと仕方なく頷くしかなかった。

観念したかのような愛妻の様子に,ギンは嬉しげにルキアをお姫様抱っこで抱き上げると,軽やかな足取りで襖に隔たれていた隣室へと足を運ぶ。そっと閉められた襖を見届けた後,ルキアは部屋の中を改めて見渡した。就寝するまでレンとゆなが駆け回っていた部屋は,朽木家の瀟洒な庭に面した襖が大きく開け放たれていた。

夜空に輝く満月が真昼のように照らす室内には,もうすでに絹布団が敷かれている。その用意のよさに,かつて自分が家出して帰った日の夜を思い起こし,軽い既視感を覚えルキアは諦めたような,呆れたような吐息を漏らす。

 

「用意周到なのだな……」

 

「当然やん!かったい畳の上でルキアちゃんを抱いたら綺麗な肌に痕がついてしまうやろ?」

 

これから別の痕を全身につける気満々なくせに,こういうところは妙に優しい。

絹布団の上に優しく横たえられ,やや不安げに潤んだ瞳で見つめ返してくる愛妻の視線,それだけでギンの背筋にゾクゾクと震えるほどの欲望が走る。いますぐ,もはや身につけているとも言いがたい状態の襦袢を剥ぎとり抱き合い,花弁のような唇を,小ぶりな形良い乳房を濃厚な愛撫で満たし,貪りたい気持ちを辛うじて押しとどめギンは月明かりに照らされたルキアの肢体をもう一度惚れぼれと見つめた。

先ほどの悪戯で胸元も裾も乱されながらも肝心なところはいまだ覆っていた白い薄絹の肌襦袢は,淡い月の光を受け蜉蝣の薄羽根のように透け,ルキアの綺麗な身体のラインを細かな陰影さえもくっきりと浮かび上がらせ,薄い布越しに見える白い肌が薄紅に染まっているさまは神々しいまでに美しく,それでいてひどく劣情をそそる匂やかな色香を漂わせている。その可憐な艶めかしさは,むしろなにも纏っていないよりも男の劣情を煽り立てる。ギンの口からため息のような吐息のような賞賛の言葉がこぼれる。

 

「ああ綺麗やね…月明かりに襦袢が透けてルキアちゃんの可愛らしいおっぱいもあそこもよお見えて,超エロいわ…」

 

「ば…馬鹿……見るな!」

 

うっとりと舐めるような熱い視線で視姦されていると愛撫されているかのように身体がむずむずと疼くように震える。

頬を染め恥らう,昔から変わらぬルキアの初々しい風情はいつもギンに新鮮な欲望を泉のように抱かせる。ギンは逸る気持ちを抑え震える愛妻の唇に優し優しいくちづけを落とすと,ほっそりとした首筋に唇を寄せ甘く吸いながらゆっくりと舌を襟元から覗く綺麗な鎖骨の窪みへと下ろしていく。ちゅちゅと小鳥が囁くような音がルキアの白い肌に紅色の花弁を咲かせていく。

 

「ん…ふ…ぅ…」

 

ルキアの甘い呻きを楽しみながら未踏の雪原のような輝かしい柔肌に己の所有の証を残すのは何と楽しいことなのだろう。緊張を解すように微かに震える身体を撫で回しながら,ようやくツンと立ち上がった愛らしい胸の尖りに布越しに舌を這わす。

 

「あっ!……うんっ!」

 

焦れたような小さな悲鳴を満足気に聞きながら,たっぷりと唾液を含んだ舌先で転がし,柔らかな唇できゅむと挟み軽く歯をたてる。こりこりとした果実のような張りと硬さは堪らない。

もう片方は柔らかく揉みしだき,爪先でかりりとひっかく刺激と柔らかく指の腹で押しつぶすような刺激,もちろんどちらにも交互に与え,ルキアの切なさを加速させていく。

 

「あっ!あぁん!んっ…くぅ…ん…」

 

「昼間から欲しかったんやろ?こないにいやらしく硬くして…ボクに触れて欲しゅうて欲しゅうて堪らんかったんやねぇ…」

 

「そ,そんな…こと…」

 

薄い布地はギンの唾液でいっそういやらしく透け,ルキアの愛らしい胸の飾りは対の宝石のように月明かりの下で絖やかに濡れ光っていた。

 

「もう布越しやと物足りんやろ?すぐ可愛がったげるからな」

 

そっと襦袢の袷を開き,形良い小ぶりな胸を露わにし,かすかな冷気にふるんと震える愛らしいふたつのふくらみに頬を押し付けその柔らかさを楽しむと,待ちわびていたかのようにふるふると震える桜色の胸の飾りをギンはちゅとくちに含んだ。

 

「あぅっ!」

 

やっと与えられた直接の甘い刺激にルキアの唇から艶やかな声が漏れる。

ギンは口の中で愛らしい飾りに唾液を含ませるように舌を絡ませ,弄ぶように転がす。時折熱い吐息をかけ,不意に飢えたように激しく吸いたてる。

 

「ぅあっ!ああぁぁ……」

 

優しくも激しい唇と舌の巧みな愛撫に思わずルキアはギンの頭を掻き抱き,強く押し付けるように抱きしめた。昼間着物越しに揉みしだかれた時に想像していた,いやそれ以上の濃密な快感に悦びの声が漏れるのをこらえ切れない。

硬くした舌先でなぞるように刺激されながら強く弱く吸われる巧みな愛撫は,意識が飛びそうな程気持ちがいい。思わずルキアはギンの頭を抱きながら甘く叫んでいた。

 

「あっ!ああっ!ギン…ギン……んんっ!」

 

存分に唾液で濡れ光るほどに胸を愛され,ルキアは胸への奉仕だけで軽く達してしまう。銀髪を乱される程に己の頭を掻き抱く可愛い妻の言葉なきおねだりにギンの愛撫はいっそう熱を増す。

片方の胸を存分に味わった後,片割れの方にも唇を寄せる。

しかし,今度は胸の先端を優しくくすぐり焦らすように唇でソフトに愛撫し,先ほどまで味わっていた方は唾液で濡れ光る飾りにはわざと触れずに濡れてなめらかに滑る指先で円を描くように同様に焦らす。

 

「あ…あん……いや……そんな…」

 

「なんやの?」

 

もっと強くして欲しい…わかっているくせにわざとくちに出させようとする相変わらず意地悪な夫をルキアは涙目で悔しげに睨む。そんな仕草も可愛らしくて男の本能を何処までも刺激する無意識の媚態になってしまう愛妻にギンの方が負けてしまう。

おねだりの言葉をくちにさせる前に再び胸への愛撫を再開する。かすかに吹きかけられる吐息にすら反応する敏感過ぎる愛らしい果実を強く吸い上げ舐めしゃぶる。

ギンの唇の中で甘やかにとろける蜜菓子のようなルキアの胸……

 

「ああぁぁ!…はっ…あぁん!」

 

甘く切なげな艶やかな嬌声はギンの下腹部の熱もじりじりと上げていく。

ようやくギンがルキアの胸から顔を上げたときじっくりと時間をかけて胸だけを愛され続けたルキアの身体は桜色に上気し,すでに絶頂を迎えたかのような涙に濡れた大きな瞳を切なげに夫に向けた。ギンは優しくルキアの頬を両手で包み込むと,触れるだけのくちづけを落とすと耳元に甘くささやいた。

 

「あぁ…ルキアちゃん,可愛えよ。どこもかしこも甘ぁてええ匂いがして…たまらんよ」

 

「ば…か……」

 

ギンはもう一度,愛妻の唇にくちづけを落とすと優しく微笑みながら襦袢の裾をするりと割った。

 

「あ…いや…」

 

待ちわびながらも未だ恥じらいの抜けないルキアが反射的にももを閉じようとするのをギンはやんわりと押しとどめた。

 

「あかんよ…よお見せて…ここはボクのもんやろ?」

 

「…そんな…」

 

「足開いてな…」

 

頬を染めながらおずおずと広げられていくほっそりとした足。頼んでも普段は恥ずかしがってめったに自分から大胆なポーズを取ってくれない愛妻の痴態にギンの背筋にゾクゾクとした愉悦が走る。ギンは滾る欲望を必死で抑えながら,次第にあらわになるルキアの可憐な秘花を突き刺さるほどの熱い視線で犯す。

 

「綺麗や…月明かりの下で見るルキアちゃんのここは露を含んだ花みたいや…」

 

ギンは愛撫を求め微かに震えているかのような足の付根にゆっくりと顔を埋める。

唇が触れただけでビクンと震える細腰をしっかりと押さえつけながらたっぷりと蜜を含んだ花弁に舌を差し入れた。

 

「ひぅっ!ああぁっ!」

 

柔らかな唇と熱い舌の感触,それだけで感じやすい身体はビクビクと跳ね甘い声が止められない。己の舌に絡みつくように溢れる愛の証。わざと音をたてながら甘い蜜を啜り,吸い上げ夢中になって味わう。

 

「ああ…ルキアちゃんの蜜は何でこないに美味しいんやろ…甘露やね……」

 

「あっ!あぁっ…やぁ…んん…」

 

ルキアの綺麗な指がギンの指通りのよい銀髪を切なげに乱す。

それに応えるようにギンの舌の動きはいっそう淫らにルキアを攻め立てる。露に濡れた可憐な真珠を舌でわざと触れたかのように軽く刺激した刹那,ギンは指を柔らかな花弁に押し当て突き入れた。

 

「ひぃっ!あぁっ!…く……うぁうっ!」

 

舌と指で同時に愛撫される切ないほどの激しい刺激にルキアの腰が震え,背中が甘やかに反り返る。大きく割り広げられた腿がブルブルと震え,爪先がビクリと反った。

ぴちゃぴちゃと花弁を舌で擽られながら,奥に差し入れられた骨ばった指先が蜜滴る膣内を抉り擦り上げくちゅくちゅと律動する。

指一本でもきつく狭いルキアの中はギンの指先さえも官能に疼かせる。滑らかに締め付けてくる肉襞の感触は自分の指のほうが愛撫されているかのような錯覚さえ覚えるほど気持ちがいい。差し入れる指はすでに二本に増えていた。ギンの舌が焦らすように滑らかな内腿に這わされる。

 

「はっ…あ…んっ!ああぁっ!ギン…ギン……もう…」

 

「あかんよ…まだまだや…」

 

甘く悶える愛妻の愛らしい啼き声を聞きながら,ギンは親指で器用にむき上げたルキアの愛らしい真珠吸い付き,とどめのように深く深く指を突き入れた。待ち望んでいた強い快楽の刺激が背筋を駆け抜ける。

 

「ぅあっ,あっあぁぁ―――っ!」

 

ルキアはギンの頭に狂おしく指をたて達した。ビクビクと震える腰を抱きながら,ギンは口いっぱいに広がるルキアの溢れる蜜に恍惚と笑った。

はぁはぁ…と喘ぎ潤んだ瞳で己を見上げるルキアの艶めかしい姿を見下ろしながらギンは蜜で濡れた口元を指先で拭うとその指に舌を這わせ魅せつけるように舐め上げる。

 

「もう挿れたげたいけど昼間はがっついてしもたからなぁ。ルキアちゃんも楽しみきれんかったんやない?今夜はこっちも昼間のぶん取り返すくらいじーっくり可愛いごうたげるからな♪」

 

「えぇっ!?」

 

うっとりと夫を見上げていたルキアの濡れた瞳に驚きの色が浮かぶ。もう今までの前戯だけで意識が飛びそうなほど翻弄されているというのにギンはまだルキアの身体に更なる甘い戯れを仕掛けるつもりなのか。

一瞬怯えたように身を震わせた愛妻の首筋にねろりと艶めかしく舌を這わすとギンはにやりと嗤った。

 

「昼間のぶんは去年のツケや!ボクらの姫初めはこれからやん♪」

 

危険な笑みをたたえた顔とは裏腹にいたずらっ子のような言葉をルキアに投げかけるとギンは自分の夜着の帯に手をかけ,しゅるりと解いた。

細身だが引き締まった肉食獣のような美しい裸体が月光の下惜しげも無く晒される。

邪魔な荷物のように夜着を脱ぎ捨てるとギンは警戒心故に閉じられてしまった白い腿に手を掛けるとやや強引に再び開かせる。

するりと逞しくしなやかな身体を割り入れられ,熱く硬い太幹を押し当てられる。

 

「…?……んっ!」

 

更なる激しい愛撫がくわえられるのかと怯えと同時に微かな期待を感じていたルキアはわずかに失望している自分に戸惑い,すでに上気している頬が更に羞恥に染まった。

しかし,もうすでに限界なほどに夫を求め身体が疼いているのも事実である。かすかな失望と安堵を噛み締めながらルキアは熱く滾った夫の侵入に耐えようとやや身体を硬くして,その衝撃に備える。しかし,予想に反して押し当てられた熱い分身は優しく擽るように甘い蜜をたたえた敏感な花びらに挿入されることなくやわやわと戯れはじめた。

 

「……っ…!?」

 

そんなルキアの反応を楽しげに見つめながらギンはいたずらっぽく笑い,とじ合わされた桜貝のように美しい亀裂にそって己の先走りと蜜をなじませるように硬い先端で擦り上げ始める。繊細な指先とも絖やかな舌とも違う,熱く滑らかでそれでいて適度な弾力を帯びた分身のソフトタッチの秘花への愛撫。

 

「あっ!あん…くぅ…んんっ!」

 

いつもは己を熱く激しく攻め立てる猛々しい肉の杭が与えてくれる優しい刺激にルキアは腰を震わせ喘いだ。いつもほんの少し挿入前に施されるだけの,もどかしいような焦れったいような挿入の前の儀式のような行為がこんなにも気持ちがいいとは…

すぐにでも挿れて欲しいのに,まだこのまま焦らされていたいような矛盾した気持ちがルキアの官能を更に煽り立てる。

 

「すぐ挿れてしまうと思ったん?ボク嘘はしょっちゅうつくけどルキアちゃんと愛し合うてる時は嘘はつかんよ…一瞬でも失望させたお詫びに,キミの期待にこたえんとなぁ…」

 

己の思考はお見通しかと赤くなる愛妻の初々しさに満足気に笑うとギンはルキアの唇を再び奪うとピンと硬く立ち上がった男根に軽く手のひらを添えながら全体を押し付けるようにルキアの秘部を擦り立て己のものに蜜を絡ませるように煽り始めた。

素股による分身の濃厚な秘花への愛撫と同時にかき回される口腔内の激しく甘やかな刺激は,ちりちりと焼け付くような互いへの飢えを加速させていく。ふたりは熱く舌を絡め貪るように唾液を吸い合う。いまだ煽り立てるだけで繋がっていない熱い昂ぶりへの欲望で中が捩れるように熱く蠢く。

 

「んっ!んっ…ふ…ぅう……」

 

「…ん…ぅ…はぁ…ルキアちゃん…気持ちええの?じゃあこれは?」

 

「ふ…くぅん…?ひぁっ!ああぁぁぁっ!」

 

硬くエラの張った亀頭の先で肉の真珠を強く押しつぶされた瞬間ルキアはギンに縋りつき再び激しく達していた。背筋に甘い痺れが走り,ビクビクと震え全身に波紋のように広がっていく激しい快感の余波にルキアは絶え入るように陶然と息を吐いた。

わななく花びらの甘い疼きを分身で感じ取り,背筋に狂おしいほどの官能と愉悦を感じながらギンはルキアの額に軽くくちづけ,事も無げに言った。

 

「またイったん?でもまだへばらんといてな…」

 

「…っ…ギン…もう……いぁ…ああ…」

 

抗議の言葉を無視し,たっした後の甘い余韻に浸るまもなくルキアのほっそりとした足を優しく開くと,ギンは引き締まった腹と平行になるほどに硬く逞しくそそり立つ太幹をルキアの柔らかな花びらに再び押し当てた。己の先走りと甘い蜜絡む先端で震える花襞を押し開き,ギンはゆっくりゆっくりとルキアの中に杭を埋めていく。

肉の壁を分け入るように押し入ってくる硬く熱い昂ぶりに,何度もイカされ極限までに敏感になったルキアの身体は再び熱を帯び始める。とろりと熱く蜜が滴り収縮する蜜壺が,早く中へと望む身体が,夫の最後の焦らしに抗議の悲鳴をあげていた。

 

「あぁぁっ!んんっ…やぁ…は…んぅっ!」

 

「んん……どっちが焦らしとんのかわからんなぁ…」

 

分身を突き入れた直後から,待ちかねたように吸い付き絡みついてくる幾重もの花襞の感触に,半分ほど挿入れたところでギンは軽く息を吐き快感を堪える。本当はすぐにでも根元まで突き入れて欲望のままにルキアを抱きしめ荒ぶる熱を吐き出したいが,今宵はずっと夢見ていた朽木邸での夜這い(?)なのだ。もっともっと悦ばせ満たし満たされたい。愛しい男を扱き上げるように締め付け甘い蜜を滴らせる己だけの,この匂い立つ至高の花を。

 

「ん…く……ぅ」

 

ルキアの愛らしい美尻が沸点を超えそうなほどの焦らしに耐えかねふるふると震えていた。

ゆっくりとじわりじわりと味わわれるように挿入され,甘痒くもどかしい快感が蜜壷から全身へと小波のように広がっていく。先程も感じた,早く奥まで来て欲しいのと同時にこのまま焦らされ続けたいような相反した想いが快楽に溶けそうな脳の中をぐるぐると巡る。

しかし,そんな思考とは裏腹に身体は一刻も早く熱い滾りを迎え入れたく,じりじりと熱く疼いていることもルキアは自覚していた。先ほどから自分の中が興奮に満たされ妖しく蠢いていることも。

早く…とはしたない懇願が唇から零れそうになり,ルキアは羞恥に唇を噛み締めギンの首

に腕をまわし強く抱きしめた。言葉にせずとも感じ取って欲しかったのだ。

そんな愛妻の初々しさに愉悦を感じながらも,先程聞きそこねた己を求める言葉を聞きたいギンは,本当はすぐにでもルキアの中に挿り込みたがる己の猛りきった欲望を辛うじて意志の力で抑えこみ,分身を半分挿入れたところで言葉を促すようにルキアの紅く染まった耳朶を舐め軽く噛んだ。そんな小さな刺激にさえルキアの身体はビクンと反応する。

 

「ルキアちゃん…可愛えなあ…そないにボクが欲しいん?そうしたらなんて言うん?」

 

吐息のような夫の甘い囁きにルキアの肩が震えた。

快感に蕩け切っていても,夫が自分に何を望んでいるのかはわかりすぎるくらいわかっている。夫婦の愛の営みの際の,自分が恥ずかしがる姿や羞恥をこらえながらくちにする夫を求める言葉がギンをひどく興じさせるのだ。

もちろんそれが自分への揺るぎない愛情故であることはよくわかっているけれど今夜はただでさえ昼間からこの男に翻弄されっぱなしなのだ。思い通りに囁いてやるのはどうにも癪であった。少し思い知らせてやろう…

ルキアはギンの頭を引き寄せ耳元にふうと息を吹きかけ耳たぶを唇で柔らかく噛んだ。

 

「……っ!?」

 

耳元に寄せられた唇に自分を求める言葉を期待していたギンは,この不意打ちに一瞬隙ができた。その隙を逃さずルキアはギンの身体を抱き寄せるように引き締まった腰にたおやかな腕をまわすと力を込め細腰を擦り付けるように熱い杭を己の奥へと導いた。

 

ずずずっ!

 

虚を突かれた拍子に吸い付くような花びらに根元まで包み込まれた欲望はルキアの中でびくりと震え更に硬さと大きさを増した。

 

「うぅっ!?あ…っくぅ…!」

 

「んっ……」

 

思わず漏れた夫の余裕のない声と再奥まで逞しいものを受け入れた快感にルキアも声が漏れそうになる。それでもなんとかルキアは痺れるような心地よさに飛びそうになる意識を繋ぎ止めながら,夫の顔を見上げた。珍しく夫の顔は真っ赤であった。

 

「……っ…ルキアちゃん,こんなん反則やろ…」

 

辛うじて放つのを堪えたものの,余裕のない素の声を聞かれてしまったのが,よほど恥ずかしかったのか拗ねたように睨むギンの顔にルキアは思わず笑ってしまった。

いつもの余裕ぶった夫の恥らう姿がひどく新鮮で可愛く思えた。

 

「いつものお返しだ」

 

愛妻の楽しげな愛らしい笑顔にギンの欲望が更に煽られる。可愛すぎるやん…もう。

それでもなんとか余裕のある夫の対面を取り繕いながらギンは囁いた。

 

「もう,容赦せんからな。覚悟しとき…」

 

ギンはしっかりとルキアの身体を抱きしめると激しい律動を開始した。強く熱く,それでいてルキアの最も感じる場所に逞しいカリを押し当て擦り立てるようにルキアの官能を煽る。挿れられただけですでに達しかけていたルキアの身体はたやすく高みへと押し上げられていく。

 

「あっ!いきなり…ぃ!あっ!あんっ!あああぁぁ!」

 

「はぁ…っく…悪い子はお仕置きや…」

 

ギンはルキアを激しく攻め立てながら先ほどのルキアの不意打ちから受けた衝撃の甘さに挿れただけで己も達しかけたことにまだ頬が熱くなっている自分に苦笑する。

SEXを覚えたばかりの青臭い小僧のようにいまだにルキアに溺れ切っている自分,愛しくて愛しくて狂いそうなほどルキアを欲している自分…情けないほどに己が妻を愛していることを自覚してしまう。

己の下で甘く啼き悶える愛妻の艶やかな肢体に爆発しそうな欲望が加速する。激しい出し入れに応えるように絡みつき,きゅんきゅんと甘やかに締まり収縮する熱い花襞,ルキアの絶頂が近い。

ギンの背にまわされたルキアの腕に力が込められ指先が強く食い込む。

 

「あっ!やぁ!もう…もう…あああぁぁっ!」

 

「…っく…んんっ!」

 

ルキアが達すると同時にギンは花びらの最奥に己の熱い滾りを解放する。

激しい絶頂にひくひくと震える愛おしい身体を抱きしめ,甘い唇に己の唇を重ねる。

熱く狂おしいほどの快感の余韻に互いに息を荒げながらも尽き果てぬ愛おしさに深く熱くふたりは舌を絡め合う。

 

「はぁ…はぁ…ん…ギン…もう…」

 

後戯にしてはやや濃厚すぎる長いくちづけの後,ようやく離れた唇を機に後始末と身繕いをしようと軽くルキアは夫の腕を叩き促したがギンは一向にルキアから身を離そうとしない。

しかも一度出したというのにギンの分身は些かも衰えも萎えもせずルキアの中で硬いままであった。

 

「ぎ…ギン……」

 

何やら不穏な雰囲気を感じルキアは不安げにギンの顔を見上げ,そこにある笑みを見た瞬間,凍りついた。その顔に浮かんでいたのは,背後に愛欲の炎を背負った愛染明王が見えたかと錯覚するほどの,まだまだやる気満々の愉悦に満ちた淫蕩な微笑み。

愛妻にされたささやかな報復は,ギンの危険な欲望に火をつけてしまっていたのだ。

まだ呼吸もととのわず息乱し震えるルキアの耳元にギンは容赦無く囁いた。

 

「ルキアちゃん,まだや…お仕置きはまだ終わっとらんよ…これからや…」

 

「そ…そんな…もう…むり…休ませて…」

 

「だめ……」

 

ルキアの嘆願をあっさりと退けるとギンは繋がったまま,ルキアの細腰に腕をまわしその可憐な身体を起こすと,猛る分身を名残惜しげに一旦抜くと胡座をかいた己の膝に座らせるようにルキアの細い足を開かせ跨らせるように抱き寄せた。背面座位の体位であった。

ギンはルキアの折れそうなほど可憐な細腰を逃げられぬようがっしりと掴むと己の熱い肉柱で串刺しにするかのように一気に己をルキアのなかに受け入れさせた。

 

「ひっ!あぁぁ――っ!」

 

己の自重で更に深々と繋がる衝撃で絡み合ったルキアの蜜とギンの精液が逆流し派手に飛沫を散らす。淫らな水音が響き聴覚までも官能に犯されていく。

そのままギンは背後からルキアの小さな身体ごとゆすりたてるように腰をつかい攻め立てる。深い深い挿入感と,再び良い所を抉られる強烈な刺激にルキアの背筋が震え,唇からは甘やかな声が漏れる。必死でギンの腕に掴まり身体を支えても,がくがくと体ごと揺すぶられる衝撃と与えられる快感が強すぎて堪えようにも甘い嬌声が零れ瞳からは涙があふれる。

「あんっ!あぁんっ!ん…ふぁ…あん…くふぅ…」

 

いき果てた後の更に敏感になった身体は触れ合う肌さえも心地良くルキアはただ翻弄されることしかできず夫の腕に爪を立て,突き上げられる度に背筋を甘くしならせる。

ギンは頬を伝う涙を舌でなめ,そのまま綺麗な鎖骨に舌を這わせながら巧みな律動で再びルキアを追い詰めていく。小ぶりな形良い胸を揉みしだき,空いた方の手はルキアの足の付根の愛らしい真珠をも刺激する。

揺すられ,擦られ,抉られる…快感の連鎖にルキアの頭は真っ白に染め上げられていく。

 

「ひっ…あぁっ!そこ,だめぇ…あぅん!んんっ!」

 

甘く啼くルキアの顎を優しく支えるとギンは快感に蕩けた顔を上向かせる。

 

「ほら……ルキアちゃん…顔上げてな。お月さんがボクらんこと見とるよ」

 

「ふあっ!んんっ!ひ……うっ…あ…いやぁ!」

 

開け放された障子の向こうの空に煌々と輝く銀色の月。

一瞬月に己の痴態を見られているかのような錯覚に陥りルキアの快感に溶けきっていた意識がわずかに覚醒する。

恥じらう妻をギンは惚れぼれと見下ろした。

 

(ああ…綺麗やなぁ…ボクのルキアちゃんは何でこないに綺麗なんやろ…)

 

愛撫にとろけた宝石のような藍紫の瞳が月光を受けて艶やかに輝き,月に向けられた甘やかな視線が彷徨う。半開きになった薔薇の花弁のような唇からわずかに滴る唾液さえ銀色に光る…その息を呑むほどの美しさ,可憐な愛らしさと成熟した女のような艶やかさが同居する混然の美にギンの口からため息が漏れる。

ルキアが見つめる月にさえ嫉妬してしまいそうだ。自分で見るように言ったというのにギンはルキアの顔を強引に自分の方に向けさせると激しく唇を奪った。ギンの熱い舌の動きに必死についてくるかのように小さな舌が絡み付いてくる。銀色の飛沫を散らしながら響く淫蕩な水音に,さらに甘い唾液を啜り己の唾液も注ぎ込む淫らな水音が上からも響く。

くちづけの合間さえギンの腰の動きは止まらず,快感を貪欲に貪りルキアの中を味わい尽くす。ようやく唇を離すとギンはルキアの耳朶を背後から柔らかくかみながら甘く囁いた。

 

「あぁ…ルキアちゃん,綺麗や。それにキミのなか熱くて柔らこうて…おちんちんが蕩けそうや…」

 

「あぁ…んっ……ば…か…そんな…」

 

「好きや…愛しとるよ…ルキアちゃん…」

 

「ギン……あぁ…ギン…ん…」

 

ギンは甘く突き入れる腰の動きを止め,ねだるように囁いた。

 

「ルキアちゃんも言うてや…」

 

「そんなこと…聞くな……っあ!」

 

「聞かせて…」

 

切なげに囁かれる夫の珍しく真摯な問いかけ。ルキアは上気した顔を上げ振り向き,一瞬ギンと視線を絡ませると恥ずかしげに再び反らした。涙を滲ませた長い睫毛が微かに震えた。

 

「……愛してるぞ…ギン…私も…」

 

「ああ…ルキアちゃん,最高や…っ…」

 

今行なっている行為よりも愛の告白はルキアにとって恥ずかしいらしく桜貝のような耳朶が真っ赤に染まっていた。そして,その恥じらいに反応するかのように小さな身体は震え中が捩れるように締まり,ギンの杭を熱く締め上げる。

恥ずかしがる顔をもっと見たくて繋がったまま小さな身体をくるりと回転させ体位を対面座位に変えるとギンはルキアをしっかりと抱きしめ再び律動を開始する。

 

「あぁ…あっ!ああっ!ギン…ギンッ!」

 

「んっ!ああ…ルキアちゃん…ルキアちゃん…っく…」

 

更に硬く質量を増した太幹に甘い締め付けで応えながらルキアは何度も夫の名を呼んだ。

再び狂おしいほどに求められ揺すぶられる。眼間に白い光が瞬き意識が飛びそうになる。

唇を荒々しく吸われ,体ごと布団に押し倒される。

強く抱きしめてくれる腕も激しく打ち付け突き入れてくる熱い滾りも泣きたくなるほど愛おしい。寝室はギンの荒い息遣いとルキアの甘い呻き,そして艶やかで淫らな水音に満たされる。

たがいの絶頂の時が近いことを感じ合ったふたりは激しく足を絡め,狂おしいほどに唇を吸い合い貪る。男の激しい腰の動きに合わせるかのように細い腰が甘やかに蠢く。

 

「んっ!んんっ!んん―――っ」

 

「……っ!」

 

最奥でひときわ熱く硬くなった欲望が弾け,なかに温かなものが満ち溢れる。

舌を舐めあい,唾液を吸いあい,淫らに腕と足を絡ませ,たがいの絶頂の声すら求め合いながらふたりは激しい官能のうちに再びいき果てた。

 

 

激しい官能の波がひいた後もふたりは無言のまま抱き合っていた。触れ合う肌も震える身体も,まだ収まらぬ呼吸さえも愛おしくてたまらない

しっかりと己の背中にまわされたルキアのたおやかな腕に切ないほどの幸福と安らぎを感じる。静謐な感動がギンの胸に満ちる。

この尊い腕が愛を込めて己の背にまわされる時を,届かぬ想いに身を焦がした切ない夜に何度夢見たことだろう。

はぁはぁと甘く息乱す愛する妻の額に優しくくちづけるとギンはルキアの身体を包み込むように抱きしめた。

 

「ルキアちゃん…ボク幸せすぎて死にそうや……」

 

「た…わけ…この程度のことで…死ぬな…」

 

「そやかて,ルキアちゃん愛してるなんて,滅多に言ってくれへんやん」

 

拗ねたように睨む夫の髪をかきあげながらルキアは,うっすらと開眼しているいまだ真紅のままのギンの瞳をまっすぐに見つめ,くちを開いた。

 

「言わずとも私の目を見ればわかるだろう……?」

 

「……っ!」

 

なんとも男前すぎる愛妻の言葉。

きゅん…と高鳴る胸のときめきに比例して反応する正直な身体。もう二回も熱い滾りを開放し愛しい蜜壷に注いだというのに早くも新たな欲望の熱が下半身を支配し始める。

 

「あー,あかん。そない可愛らしい事言われたら我慢できんわ!」

先ほどまで労るようにルキアを抱きしめていた腕にわずかに加わった力に欲望の兆しを感じルキアは慌てた。

 

「ば,ばかもの!これ以上まだする気か!?」

 

「そないに可愛い顔で誘惑するルキアちゃんが悪いんやん…」

 

「なぜ…私が…んむぅ!んんっ!」

 

言葉はくちづけで封じられ新たな官能に溶けていく。首筋から鎖骨,胸元に咲かせられていく緋色の花弁…この身体に印を残せるのは己だけ。

夫婦となってどれほどの時がたとうと,星の数ほど抱き合おうと,決して変わらぬルキアへの想い。その少女のような可憐な面差しに肢体,そして初々しい甘やかな反応はいつもギンに仄暗い背徳感と瑞々しい欲望を抱かせる。いっそ飢えと言ってもいいほどのルキアへの愛情は夫婦となってからも微塵も変わってはいない。生きている限り,いやたとえ命尽き果てたとしても永遠に変わりはしないのだ。

再び激しい交わりを予感しながら,夫の引き締まった胸に抱き寄せられ,ルキアは広い背中にたおやかな腕をまわし,諦めと愛情を込めて強く抱きしめて応えた。

甘やかで濃密な時間が再び閨の中に流れ始める。

 

そう,愛し合うふたりにとって夜は短すぎるのだから……

 

 

翌朝,なかなか起きてこない子供たちに昨夜軽く薬を盛ったことを知らされ激怒したルキアにギンは右の頬もひっぱたかれるのだが,それは明日のお楽しみ。

 

             

END


※2013.1.12

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