とても現実とは思えぬ悪夢の始まり、悪魔で校医の市丸ギンに犯された入学式から十日ほどたった。

市丸ギンには一週間に一度、悪魔との『契約』という交わりを行わないと『ペナルティ』があると脅されていたが、
だからといって自ら保健室に行く気などさらさらなく、それどころか保健室や奴に近づいたりしないよう、
授業以外に校内をウロつくことなく細心の注意を払って行動していた。

常人であればあまりのショックに入学早々不登校となるか、
もしくは、悪魔である正体はともかく市丸ギンのような人目をひく男に選ばれた優越や、
人間では得ることの出来ないまさに悪魔的な快楽に喜んで身を捧げるかの2択が浮かぶ。

しかし朽木ルキアは強い意志を持ってそのどちらでもない道を選んだ。






『 恋に落ちた悪魔 』  前編





わった時の身体の奥が熱く痺れ溢れた快楽も、市丸ギンの背から大きく真っ黒な羽が現れた記憶はハッキリと残っていながら、
あれは貧血時にみた単なる『悪夢』なのだと思い込むこととし、そんな記憶に屈することなく今後決して奴とは関わらず、
意地でも静かな高校生活を守りぬくと心に決めたのであった。

なのであれ以来、ルキアはギンと顔を合わせてはいない。
『ペナルティ』の事を考えていないわけでもないが、だからと言ってそんな餌に食いつき奴の思い通りになるのは絶対に嫌であり、
何か起こるのではないかと常に身構えていれば、ある程度のことであれば冷静に対処できる自信はあったし、
こちらが完全無視を貫けば気まぐれな悪魔も自分に興味を失ってくれるかもしれない。

いや。
間を過ぎ た時点で何事もなかったのだ。

すでに興味などなくし放っておいてくれたのだろう。と、勝手に安心してしまっていた。

しかし、ルキアは思い知る。

そんな自分の根拠のない勝手な自信も思惑も悪魔を見くびっていた心も、海外土産のチョコレートより甘い甘い代物であったことを。

そして現在。教室で机を寄せ合い、
新しく出来た友人達と昼食を済ませた頃。

それは、突然やってきた。


ドックン!

「!?っつ、うくぅっ・・・・・!」


予兆もなにもなく、突如ルキアの身体の中心に疼くような熱が生まれ、うねりながら急激に上昇していくのがはっきりとわかった。
思わず出そうになった声を強く唇を噛み締めなんとか押し殺せたが、身体はビクッと反応した拍子に机もガタンと大きく鳴った。


「どうしたの朽木さん?顔赤いよ。大丈夫?」

「うっ・・・、す、すまぬ井上。

だい・・じょうぶだ・・・心配、ない。」


目の前の席にいた織姫だけでなく、その場にいた友人皆に見つめられ平静を装ってはみるが、
その間にも熱はどんどん上がっていき、普段は透き通るように白い頬も赤く蒸気し、
荒ぶる息をこぼさぬように歯を食いしばり、見る間に大きな瞳は熱っぽく潤む。

しかしこれは熱風邪でもなく、最近の異常気象に伴い異様に上昇した夏の気温にあてられた暑さのものとは明らかに質が異なる。

身体の奥の奥に潜む女の部分が熱い疼きに溢れた蜜がじんわりと下着に滲みだし、微々乳過ぎて我ながら必要性を感じないブラに、
痛いくらい起立した胸先が少し擦れただけでピリピリする刺激に全身過敏になっている自分を制することができない。

突然、どうして、こんな。

理由も対処もわからず、絶望的な無力感に混乱し震えるルキアはなす術もなく、
それでも揺れる身体を収めようと自身を強く抱きしめる。


「こんなに震えて・・・寒いの?暑いのかな?」

「大丈夫朽木さん?気持ち悪い?吐きそう?」


様子のおかしいルキアに近づき心配そうに見ていた織姫達の様子に、ざわついていた教室内の生徒全員が次第にルキアの方へと目を向けてきた。

ああ。だめだ。
皆、こちらを、私を、見ないでくれ。

うまくこの場をやり過ごし皆の注目は避けたいルキアは、涙ぐんだ真っ赤な顔で必至で強張った笑みを浮かべてみせた。


「あの・・・いえ、あ、だ、大丈夫、ですから、私の事は気にせず・・・」

「何を言っているの!こんなに顔を赤くして、熱があるんだろう?早く保健室に」

「嫌だっ!」


『保健室』の単語に反射的し、タツキの言葉を遮り叫んでいた。
こんな状態であの悪魔の元へ行くなど冗談ではない!
だが、そんな事情を説明することも出来ぬルキアは、歯を食いしばり仕方なくフラつく身体で席を立つ。


「も、申し訳ありませんが・・・身体の具合が悪いので、
その・・・そ、早退してもよろしいでしょうか?」

「それはいいと思うけど・・・そんな状態じゃ一人で帰れないよね?
少し保健室で休んでいれば、授業後に私が送ってあげるよ。」

「いいえ!・・・いえ、大丈夫です。
ひ、一人で、大丈夫ですか、うあっ!いやあぁっ!?」

「!?」


赤く火照り小刻みに震えながらゆらゆらと揺れる身体でなんとか立っているルキアの、妙な危うさに支えてやろうとタツキが手を伸ばすが、
それでも大丈夫と気丈に繰り返したルキアの口から思いがけない甘い声が上がり、驚きに教室全体の視線が一斉にルキアに集った。

立っているだけでやっとだったルキアは完全に不意をつかれ、叫んでしまってからハッとし慌てて両手で口を覆う。
そうなると自力で立っていることさえできなくなり、膝からガクンと崩れ落ちるように床の上にへたり込む。

ルキアを襲った第二の異変。
内側から少しブラに触れただけでも反応してしまう程、痛いくらいビンビンに立ち疼く乳首が、
見えない指にきゅっと摘まみ捻られた感覚にそこから稲妻が走り全身を駆け抜けたからだ。

それを合図に今度は脇や足指まで身体中をいやらしく撫で回す手の感触。
既にぐしょぐしょレベルで濡れそぼった下着の上から押してくる指の感触。
全身くまなく弄られたルキアは、両手でどんなに強く口を塞いでいても官能的な息遣いは漏れ出てしまい、
凶悪なま
でに高まった快楽に襲われどうしても誤魔化しきれないレベルのものになっていく。

立ち上がり駆け去ることも出来ず、教室の床に座りこみ皆に見られながら自慰行為を行っているも同然。
見る間に淫蕩さが増していくルキアから誰も目が離せなくなり、ざわついていた教室から音が消えルキアの押し殺された喘ぎがやけに響く。

遠い席にいた生徒らは、もっとよく見ようと立ち上がり、いつの間にか男子生徒だけがルキアを中心に囲みはじめていた。

どうしてこんなことに。
妙な熱視線で同級生に囲まれ見下ろされながら、みっともなく快楽に翻弄される無様な様を見られなければならぬのだろうか。
白衣をまとった狐顔の悪魔が頭をよぎったのは一瞬で、あとは払うことのできぬ享楽にルキアの体も思考も蹂躙される。


「・・・朽木、苦しそうだな。大丈夫か?」

「だ・・・だい、じょうぶです。ですから・・・あ、皆は、席に、戻って・・・」

「俺、さすってやるよ。」

「え!?いえ!いいえ!今私に触らないでください!」

「そんなこと言っても苦しいんだろ?制服、脱いだ方がいいんじゃないか?」

「な!」

「そうだな。脱がせて朽木を楽にしてやろう。」

「そうするか。」

「じゃあ俺が。」

「俺だって!」

「割り込むなよ!俺にも触らせろ!」

「・・・・・!」


最初は好奇心にニヤつきながら眺めていた男子生徒達もルキアの放つ色香に魅入られはじめ、
いつの間にか目つきが変わっており、熟れ芳る女に触れようと多くの男がルキアに向かって一斉に手を伸ばした。
本来ならそれを阻むはずの女生徒達もまた異常な雰囲気に当てられたのか、
輪から離れ誰一人声を上げず身動きもせずルキアに群がる男子生徒達の様子をじっと凝視しているだけだった。

誰か一人にでも触れられたら自分がどうなるか何が起こるのか。
狂気渦巻く輪の中から多くの手に囲まれた絶望と恐怖にひきつり、言葉ではなく頭の中で大声で叫ぶ。

助けて!
助けてくれ!
ここから逃してくれるのなら、悪魔だってかまわない!

 

 

 

 

「目ぇ覚めたん?」

「・・・・・え?え?・・・あ、な!」


多少の時差の後、ルキアは慌てて身を引いた。
目の前には不機嫌な顔をした市丸ギンがおり、消毒薬の匂いに真っ白な室内で、
また保健室にいるのかと自分の置かれた現状を確認した。

しかしギンはそれ以上ルキアに迫ることなく、なんだか不貞腐れた様子で大人しく自分の椅子の方へと戻り腰を下ろすと、
頭をがしがし掻き毟りながら、これみよがしにわざとらしい大きなため息をひとつ吐き出した。


「あーーーもう、ほんまに〜〜〜
人ん前で盛るなんてあかんやろぅ。
ほんまに信じられんわぁ〜〜〜〜〜〜〜」

「なっ!?す、好きで盛ったわけではない!私は被害者だぞ!
なぜそんな言われ方をせねばならんのだ!?」

「せやから僕、ちゃぁんとペナルティの事言うてたよね?
僕が助けんかったら、同級生に教室内で輪されとったよ。
こないひどいことなる前に、なんで僕に会いに来てくれなかったん?」

「知っていたら事前にちゃんと策を講じておるわ!
普通、あ、あんなひどい目にあうなどと思うはずなかろう!
それにほら!やはり貴様のせいではないか!この悪魔!!」

「そら確かに僕は悪魔やけど、今回は僕のせいばっかりやないよ。
ルキアちゃんにも責任あるんやもん。」

「な、なんだと!まだ私に言いがかりをつける気なのかきさっ・・・・・ひぃぃっ!?」


あの場から逃げ出せた安堵とギンへの怒りに捲し立てていたルキアは、
未だ身体を弄り続けている手の感触に気づいた瞬間ぞっとして悲鳴を上げた。
そんなルキアを眺め、ギンは愉快そうに意地悪くにやりと笑う。


「ほぉら、な。まぁだペナルティは終わっておらんよ。こっからが本番やから。」

「貴様っ・・・!これは、なん・・・・・だ・・・っうん!」

「心配いらんよ。
簡単に言うたら、一定期間僕と交わらんかったら身体が勝手に発情するようになるだけやから。」

「はつ・・!?それの・・・どこが、心配無用、だと・・・・・!」

「無用やろ。治すには、僕と交わればええだけなんやから。」

「!ふっ、ふざけるな!誰が、貴様なぞ・・・ひうぅ・・・!」

「僕はええよ。
こんままのんびりお喋りしとっても楽しいしな。お茶でも淹れよか?」

「・・・この、悪魔め!」

「知っとるはずやろ。」

「そうだ!・・・ところで、その、皆は、どうした?」

「ん?同級生やろ?心配いらんよ。
きれーに記憶は消して、今頃大人しゅう授業うけとるところやし。」

「そうか。それなら・・・いい。」

「記憶は消したんやけど、エロいルキアちゃんの姿、僕以外誰にも見せとうなかったなぁ。
せやのに、大勢の人間のガキに見られるなんて、僕かてショックやったんやから、ほんまにルキアちゃんは気ぃつけなあかんよ。」

「貴様の呪いのせいではないか!本当に勝手な・・・んんっ!・・・ふ、う・・・」

「そんで?僕はどーしたらええかな?
ほらほらはよぅ、ルキアちゃん決めてぇ。」

「こっちに・・・来い。」

「へぇへぇ。よろこんで〜」


やっとのお呼びに上機嫌になったギンは、弾むような足取りでルキアのすぐ隣へと腰かけた。
それとは反対にルキアの方は、腹底から湧き上がる不本意さに強く唇を噛み締めている。


「そんで?次はどうしよか?」

「これを早くなんとかしろ!」

「ルキアちゃんらしい誘い文句やね。ほな、許可ももらえたんやし、遠慮のういただきます〜」


へらへらしたギンの態度にキレ乱暴にネクタイを引っ張り顔を寄せ、ルキアは思いっきり怒鳴りつけた。
しかし怒鳴られてもギンはひるむどころか、いやらしい笑みを更に満面にし、嬉しそうにルキアに向かい手を合わせた。

熱に浮かされ半開きのルキアの唇に己の唇を重ね合わせた途端、人間よりも細く長い舌が侵入し嬉々として絡まりついた。
その感触のあまりの心地よさにそれだけで気を飛ばしそうになったルキアは全身ゾクゾク震わせ、
普段の品位方正さをかなぐり捨てた大胆さで自らギンの腕を強く引き掴み、舌に舌を擦りあわせ得られる快楽を貪欲に欲しがりはじめる。

あぁ、やっとだ。
でも、足りない。
もっと、もっとだ。
足りない。
足りない。

こんなんじゃ、全然、足りない。

もっと、もっと、もっと。

早く、早く・・・

気持ち良くなりたい。

長時間耐えた反動に、既に理性のタガが外れたルキアの頭の中では、もっと強い刺激を求める腹を空かせた獣の声だけがやたら響く。
もう悪魔の罠で構わない。
速くギンに疼くこの身体をなんとかして欲しいだけなのだ。


「なぁ、ギン・・・」

「ルキアちゃん?どうしたん?」

「もっと・・・早く、気持ちよく・・なり、たい・・・」

「奇遇やね。僕もや。」


笑いながらギンは手早くスカートを脱がせ、湧き出す愛液にぐっしょり濡れきった下着を抜き取ると、
臨戦態勢を構えた自身を濡れる花襞に押し付けようとした。
しかし。


「や!待て!待ってくれ!」

「なに?どうしたん?やっぱりやめて欲しいん?」

「そうではない!・・・そうではないのだが・・・・・
あ、あの・・・今日も、魔法をかけるのか?」

「魔法て?」

「あの、初めてでも痛くならないとゆー魔法のことだ。」

「あぁ!それやったら心配せんでも毎回するよ。せやから痛ぁないし・・・」

「かけないでくれ。」

「へ?」

「痛くてもいいから、魔法はかけないでくれ。頼む。」

「へええぇーーー・・・・・?」


この発言を訝しみ覗き込んでくるギンから目を逸らし、呟くようにルキアは言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※設定説明な前戯(序章)だけで前編終わってしまいました。すみません。
その代わり後編はエロしかないんで、それで許してください。
裏話ってほどでもないんですが、今回とにかくエロいの書きたいってことで選んだのがなんでもありの悪魔ギン。
悪魔は魔法ありだし簡単にエロくできるしいいだろう。って進めてたら、なぜかルキアが↑言い出して私的にあれー?でした。
こんな展開するつもり全然なかったのに。
初めて表現は痛いばっかで、それなのにすぐ処女なのに感じちゃうとかありえないしで書くの好きじゃないんですよ。
それなのにまたの破瓜表現有りにあーっ!てなりながらも、頑張って後編書いてます。ちょこっとでも楽しみにしててもらえると嬉しいです。
しかも2015最初の更新なんですねーうわーこんなのが・・・ あとで拍手SSも変えたいなー
2015.8.28

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