尺魂界
十三番隊の庶務室で朽木ルキアは机に筆を置いた。

「・・・もうこんな時間か。」
時間は夜の十時を少し過ぎていた。





『 狐が落ちる 』





時計を眺めボンヤリ呟くと、腕を伸ばし大きく伸びをする。
最近虚討伐ばかりで、事務作業をずいぶんと溜め込んでしまっていたのだ。
もう少し早く終わると思っていたのに案外手間取り、こんな時間になってしまった。

それでも残りはあと一枚。
明日は休みなのだから、気合を入れなおし再び筆を手にした時、
手元を照らす明かりが揺らめき、ルキアは顔をあげ、戸口に立つ長身の人影を認めた。

「こんな時間まで熱心やね。ルキアちゃん。」
「・・市丸・・・隊長?」

影の主は三番隊隊長市丸ギンであった。

いつも笑みを絶やさぬ表情は、本心を決して覗かせぬ仮面にしか見えない。
他の者達とは相容れぬ奇妙な存在で、ルキアは正直この隊長が苦手であった。
三番隊の庶務室はここからかなり遠い位置にあるはずなのに、一体なんの用があったのか。
怪訝な表情のルキアに構わず、ギンは部屋へと入り込み、机を挟んでルキアの真正面へ腰を下ろす。
行動の真意が読み取れぬ奇妙な狐に警戒心を丸出しに、やや棘のある口調でルキアは静かに問いただす。


「市丸隊長、何か御用でしょうか?」
「そないにつれないこと言わんと、たまには僕とお喋りでもせえへん?」
「・・・仕事が、ありますから。」
「まだ終わってへんの?ええよ、まってるさかい。」

ギンは胡坐をかくと肩肘をつき、例の笑顔のままルキアをじっと見つめた。

(これは何を言っても聞き入れてはくれまい。)
ルキアはなんとも居心地が悪くはあったが、仕方なく執務を再開した。

その間ギンは何も言わずルキアを見つめ続ける。
奇妙な緊張感と沈黙が五分程過ぎた頃、ルキアは筆を置いた。
「あ、終わったん?」
ギンが嬉しげに机へと身を乗り出す。
ルキアは溜息をつきつつギンと向き合った。
「いいえ!このような状況ではとても仕事など出来ないので今夜はもうあきらめました。
で、なにをお話したらよいのでしょうか?」
「いやールキアちゃん。そないにつれないこと言わんと、今から僕の屋敷にでも来ぇへん?」
「お断りします!」
強い口調でルキアはギンを跳ね除ける。

ギンの薄い目が僅かに見開かれ、鋭い眼光が覗く。
「・・・ほんま、ルキアちゃんはつれないなぁ。」

突然ギンはルキアの腕を掴んだ。

ルキアは内心ひどく驚いたが、つとめて表情を崩さず冷静に対処しようと試みる。
「・・・市丸隊長、離して下さい。」
「いやや。」

ギンはいつものように笑って言う。
しかし、手に込められた力は本物で、ルキアが本気で振り払おうとしても動じそうになかった。

「お願いですから、ふざけないで下さい。」
「ふざけとらんよ?・・・本気なんや。」

顔を上げたルキアと見合った時、ギンの瞳に光が宿る。

あ。と思う間もなく、ルキアの体は引っ張られ、気付くとギンの腕の中に抱かれていた。
「なにお・・・っ!!ふっ?!」
ルキアはギンに抗議すべく顔を巡らすと、そのまま唇を唇で塞がれる。
その感触の卑猥さに驚きルキアは目を見開いた。
ギンの舌はルキアの唇を舐め、口内に侵入すると歯茎をも舐めまわす。
そのまま器用に舌を舌で絡みとられ、容赦なく弄ばれた。

「ふうっ!くうっ・・うっ、ううっ・・」
初めて経験にルキアは全身の肌が粟立ち、体中の血が逆流していくような激しい感触になすすべもなく翻弄される。

ぴちゃ、くちゅ
二人の口元から水音が響き、ルキアの口から溢れた滴が一筋流れた。

「ひうっ!・・もっ、もうおやめ下さい!!」
やっと唇を解放され、ルキアは息を乱したまま、意識を混濁させそうになりながらも必死で拒絶する。
ギンはいやらしい仕草でゆっくりと己の唇を舐め、妖しい微笑みを貼り付け再び顔を間近に迫らせる。
「なんで?気持ち良くなかったん?
・・・そしたら、もっと気持ち良くせないかんなぁ。」

ルキアが言われた言葉を理解する前にギンは行動し、
ルキアの身体に回された腕にやや力をこめて細く
真っ白な首筋に顔を埋め吸い付いた。

「ひぃあっ!やっ・・・!あぁぁんっ!やぁ・・・」

首筋を舌で舐めあげ軽く吸われ、間に耳朶までも甘噛みされルキアは全身が甘く痺れた。
ギンの手は襟元から内部へ入り込み、小ぶりな胸を揉みしだく。
胸の頂を摘み軽くひねられ、身体は初めての快楽に敏感に反応する。


それは普段ギンに感じるゆるやかな毒気とは全く質の違う、凶暴なまでの強引な快楽。


ギンの指先は的確に快楽を生み出しその小さな刺激を煽り増幅させていく。
ルキアは次第に下半身に言いようのない切ない疼きと熱が溜まるのを感じ、

止めたくても止められない、自分のものとは思えない甘い喘ぎを絶えずあげ、
その拒むことのできない悦楽に流され意識が飛び散りそうになってしまう。

「ルキアちゃん、そないに可愛い声で啼いて・・・気持ち良いん?」
耳元で忍び笑いで囁かれ、ハッと我に返ったルキアは恥ずかしさで堪らなくなる。
「もっ、もういいでしょう!悪ふざけはこれ位にしてお帰り下さい!」
ルキアは慌てててて身を引き、開き乱れた襟元を合わせ直しつつ立ち上がる。
ギンは座り込んだままルキアを見上げ眺めていた。

「ええの?」
「・・・は?」
「僕帰してしもてええの?ほんまはもっとしてほしいんとちゃう?」

今までより一層残酷にギンは笑う。
ルキアは潤んだままの瞳を僅かに開きギンを見下ろした。
否定が・・・・・出来ない。

ルキアの身体は今までに感じたことの無い甘い熱を帯び、切なさに苛まれている。
(もっと、もっとして欲しいーーー)
ギンに問いに答えるように蜜壷から快楽の印となる蜜がどろりと溢れ、
自分の意志とは思えない、みだらな声が内で響く。


その声を下半身を濡らす蜜に気付かぬフリをして、きつく目を瞑りルキアは叫ぶ。
「そっ!そんなことはありません!!どうぞ、お帰り下さい!!!」

「・・・そーですかー」
ギンは頭を掻き軽い溜息をつくと立ち上がり、意外な程素直にのそのそと扉へ歩き出す。
「そしたら、お邪魔しましたー。」
ギンは正面を見たまま片手をひらひら振ると音もなく障子を閉め、そのまま大人しく立ち去った。


ルキアはしばらく動けず、はやる鼓動を押さえ襟元を両手で握りしめたまま立ち尽くす。


生涯初めての行為に、眩暈がする程の恥ずかしさと快感がまぜこぜになり、いてもたってもいられない。
愛撫から解放された身体の熱は冷めるどころか、益々高まっていくようで余計に切ない気分になる。

蛇に噛まれた毒は驚く程早くルキアの体内を犯し駆け巡り、その毒を欲して切なさに身体の疼きが止まらない。

(モットホシイーーー)
あの声が先程より大きく聞こえてくる。
どうすればこの身体の疼きが止まるのか。

どんどん熱を高めるていく抗いがたい身体の要求に、
ルキアは恐る恐る片手で服の上から自分の胸を掴んでみた。

(違う。)
ギンに揉まれた時の感じとは程遠い。
更に服の中に手を入れ、直に胸に触れ頂までも摘んでみるがやはり感覚は物足りない。
(どうしよう。)
既に切ない痺れに侵された身体は、立っておれずルキアは床に座り込んだ。

(サワッテホシイ、サワッテホシイ、モットキモチヨクナリタイーーー)

ルキアは本能の声に動かされ、何も考えられず袴を脱ぎ捨て、自らショーツの中へ手をすべりこませた。
「・・・ひぃ!あっああんっ!」
身体がビクッと跳ねる。

そこは切ない疼きと蜜で溢れ、下着まで濡れ染めているほどだった。
滑る花ひだを擦れば疼きが和らぎ快楽に声があがる。
更に高い快楽を求めて、指は密やかに息づく敏感で小さな蕾をつまむ。
「!!っふあっ!ひぃあぁぁっ!」
今までで一番強力な感覚がルキアを襲う。
蕾を刺激して生まれるこの快感で、身体の疼きを止められるかもしれない。
ルキアは無意識にそれを感じ取り、一層激しく指を動かす。
ぐちゅぐちゅと卑猥な蜜の音を響かせ、はじめはとまどい気味に動いていた指が一定のリズムを刻み、
ルキアは高い快楽を得るために行為に没頭しはじめていた。
もっと、もっと、もっと欲しい---



「なんや。やっぱり遊び足りなかったんや。」
「!!!」
いつの間にか開け放たれた扉にまたしても市丸ギンが立っている。

ルキアは声がした瞬間、反射的に蜜壷から指を引き抜き、羽織っていた着物の前を合わせ肌を隠す。
いつからそこに居たのか全く分からなかった。
残酷な微笑みを仰ぎ、ルキアの身体は小刻みに震え絶望的な気持ちに滾った熱が芯から冷えていく。

「ここでそーゆーことするなら、鍵くらいかけとかなあかんて。意外と大胆やねぇ。ルキアちゃん。」
再び室内に入ってきたギンに、ルキアはなすすべもなく黙って見守っているだけだった。
ギンはルキアの前でしゃがみこみ、頬を撫でながら優しく囁きかける。
「もうすぐ見回りが来よるし、・・・僕とこ行こか。」
選択の余地がないと感じ取ったルキアは、素直に頷きそのまま顔を伏せてしまった。
「ええ子やね。」
俯いたルキアの頭をギンは撫でる。
目の奥で黒く欲望をたぎらせながらーーー

 

 

暗い室内を弱い月の光が照らす。

部屋では布団の上で裸身の少女が甘い喘ぎ声をあげ、その少女の足の間に男は顔を埋めている。
「あぁはうっ!やあぁぁ・・・」
一際高い声で少女は限界を告げる。
それを察して男の動きが止まり、ゆっくりと身体を起こした。
「・・・そろそろええみたいやね。」
ギンはベタベタに濡れた口元を手で拭い、密やかに笑う。
長時間の愛撫に全身を震わせて、ルキアは息も絶え絶えになっていた。
「へばってしもたか?すまんなぁ。
あんまりルキアちゃんが可愛いもんで、手加減できんかったわ。」

ギンは笑いながらルキアの広げた足の間に自分の身体を割りいれた。
「あぁ?・・・やっ、あっ、ぁ・・・」
半ば放心状態になっていたルキアだが、今まで舐め回された秘部にギンの熱く猛る自身を押し付けられ、
反射的に恐れを抱き腰をひねって逃げようとした。

もちろんそんなことは許す訳も無く、ギンはルキアの腰を掴み自身を蜜壷に固定する。

「痛いやろうけど・・・辛抱してや。」
「!!!っ、痛っ!」

ギンの腰が押し付けられ、激しい圧迫感のをともないルキアの中へと侵入する。
ルキアはそこが押し破られる感覚に、全身を突っ張らせ唇を噛んで必死に耐えた。

「ごめんな、ルキアちゃん。痛い?痛いなぁ。ごめんな。」
ギンの声は初めて聞く優しい声音で、繰り返しルキアを慰める。

「そやけどルキアちゃん・・・もっと体の力抜いてくれへん?
きつくてまだ半分も挿りよらん。」
「やぁ、やっ・・無理、むりぃ・・・い、たぁい・・」
新たに涙をほろほろ流し、ルキアは顔を必死に横へ振る。
「・・・ほんまに可愛いわぁ。」

ギンは満足そうに呟くと、おもむろにルキアの耳の中に舌を這わせた。
「?!ひゃぁん!」
突然のことに驚き、ルキアの身体の力が抜けた一瞬を狙ってギンは一気に腰を推し進める。
「!!!うっ、あぁぁっ!!」
「っく!・・・きっつー。」
締まりすぎる感覚に、ギンはやや苦しげな表情をする。
それでも全てがルキアに収まった喜びは、ギンの征服欲を十分に満足させた。
「わかる?ルキアちゃん。全部挿ってもうた。」
ルキアは痛みに泣き声をあげるだけで、ギンの言葉は届かない。

「痛くさせて堪忍や。・・・でもな、これで君は僕のもんや。」
ギンは上半身を倒し、ルキアの額に触れるだけの優しいキスをし、宣言するかのごとくもう一度囁く。
「君は僕のもんや・・・」

しばらく挿入したままの状態でギンはルキアの様子を見ていた。
痛みに泣き声をあげていたルキアだが、その声にやや落ち着きが戻ったのを確認してからゆっくりと腰を動かす。
誰も受け入れたことのないルキアの秘部は、侵入者を拒むかのごとくきつく締め上げ追い出そうとしているかのようであった。
そこでギンは一回一回確認するかのように、自身を蜜壷からギリギリまで引き抜いては奥に挿しいれ少しずつ慣れさせるつもりだった。
痛がるルキアがこの行為で快楽を得られるように、丁寧にゆっくりと動きを繰り返す。

ギンが肌を重ねた女達は皆経験があり、それだけにすすり泣くルキアの姿はひどく痛々しく見えた。
それでも彼女の初めてを奪い、肌と肌と触れ合わせられる優越感は隠しきれない。

とても大事にしたいのに、自分の手で滅茶苦茶にしてしまいたい相反する気持ちが混ざり合う。
(・・・悲しい男の性やね。)
それでもルキアの秘部から蜜が溢れ、卑猥な水音が聞こえてくると、ギンの劣情は激しくあおられ次第にこの行為に夢中になっていく。

「もっ、やぁだ・・・やめっ・・お願い・・です。やめて・・下さい・・・」
大きく深い菫色の瞳から涙を流し、ルキアは切なくギンへと懇願する。
「・・・やめて・・・あげたいんやけど。」
ギンは休むことなく腰を律動させながら、ルキアの白く小さな胸を撫でいじる。
「そんなん無理やわ。ルキアちゃんが可愛い過ぎて、やめたくてもやめられんて。
・・・だから、堪忍な。出来るだけ、気持ちよくさせたるから。」

「?!!やぁっ!やだ!そこ!やっ!触らないで・・・!」
ギンの手は胸を離れ、両手で秘部の蕾を探る。
片手で蕾を剥きだし、もう片方でその蕾をしごきだす。
ルキアは凶暴な激しい感覚に怯え、必死でギンの手を外そうともがいたが、その手は逆に拘束される。
「これ・・・効くやろ?」
ルキアの痛がるばかりの泣き声に、少しだけでも甘い嬌声が混じり始めるのがわかった。
既にギン自身もルキアの蜜に濡れそぼり、特に気遣うことなくリズミカルに腰を動かせる。

ルキアが感じはじめている。

ギンは満足し、更なる高みを目指し指先を器用に動かす。
「ふあぁんっ!ひゃっ・・!だめっ!やぁ・・だめぇ・・・!!」
ルキアはギンに貫かれるこの行為に順応しだし、感覚は痛みだけでなく僅かな快楽を身体は知り始めた。
ギンに動かれるたびあがる声が、抗議なのか歓喜なのか自分でも判断がつかない。
ただひとつだけ言えるのは、庶務室で自慰をした時身体が求めたものは確かにこれだったのだ。
ギン自身で蜜壷が擦られ、痛みの中にも快楽が生まれる。

(コレガ、ホシカッターーー)

ルキアの顔に苦痛意外に恍惚とした女の表情が表れ始め、その微妙な変化をギンは敏感に感じ取り、
それが喜びとなり背筋をぞくぞくと痺れさせ口元の笑みが余計に深くなる。

「ルキアちゃん・・・僕の・・・もんやで・・・」
熱に浮かされたような口調でギンは言葉を繰り返す。
ギンは自分自身知らない感情が芽生え、今までにない熱心さでルキアの身体を味わう。
その全てが欲して欲しくてギンは激しく執拗にルキアを攻め貫く。

淫らに甘く濃厚な時間が過ぎ、やがてこの淫靡な宴は終焉を迎えようとした。
「っ!・・・ルキアちゃん、ちょぉ辛抱してな。・・・僕、もう、限界や・・・」
「!!!あああっ?!」
ギンの腰が激しく打ち付けられ、その衝撃にルキアはまたも圧迫される。
ギンは両手でルキアの腰を固定し、素早く激しく最後に腰を打ち込む。
「!!・・・っく!」
「ふぁっ!やっ!・・・あああぁぁんっ!!」
一番深く交わった体勢でギンの腰が震え、ルキアの中に欲情を吐き出し、ルキアは細く高い叫びをあげた。



ギンは安らかに眠るルキアの寝顔を見つめ、ぼんやりと考えていた。
行為の最中に感じた感覚はなんなのか。
あんな気持ち、自分は知らない。
でも明らかに今までと違ったなにかがあった。
とても心地よく、熱いなにか。

でも。と、ギンは自らを戒める。
(・・・知らんままで、ええか。)
ギンはそれ以上考える事をやめ、ルキアの隣に横になると薄い目を閉じた。
知ってしまったらなにものにも縛られぬ、今の自分ではいられなくなる。
そう本能的に悟ったのだ。

余計な感情は必要ない。
それは怯えにも似た防衛本能。

己の中に芽生えた想いを吐き出すが如く深い溜息をひとつつき、ギンは静かに眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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いいわけ
 四部作第一弾。ギンルキならでは(?)の不幸な始まり。・・・ですが、これで限界。
 これからギンが黒から白に変化していきます。最終的にはまっしろしろしろ・・・
 それでも大丈夫な方は読んでみて下さい。少しでも楽しんでいただけることを願います。
 2008.5.

material by 薫風館

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