夜になり、冷たい雨が激しく降り注ぐ。

明かりも灯さずギンは寝間着で布団に寝そべり、障子を開け放し止まぬ雨をただ眺めた。
思いついたように傍らの杯を手にし、中の酒を舐めるように口にする。
珍しく気に入った銘柄の酒だったのに、うまいと感じず苛つき杯を庭に投げつけた。
庭石にぶつかった杯は高い音を響かせ割れ落ちる。

「・・・あかん。きついわ。」
ギンはごろりと横になり、溜まった胸のうちを小さく吐き出す。

今日の出来事はきつかった。
ルキアの身体に指一本触れない為、いつもより少し顔を近づけただけなのに・・・
『わっ、私に近寄るな!!』
激しい剣幕でルキアに拒絶されてしまった。

この五年間、ずいぶんと努力してきたつもりだったがまだまだ足りないようだ。
でも一番堪えたのは、それなりにルキアとの距離が縮まった気がしていたのが、
こちらだの一方的な思い込みだった事に愕然とした。


ルキアに恋して、退屈でつまらない日常が美しく色づき楽しいと思えることが出来た。
でもそれは諸刃の刃で、ルキアの機嫌ひとつでいとも簡単に崩壊する世界。

市丸ギンがなんてザマか。

情けなくて自虐的なの笑みしか浮かべることができない。
自分が自分でなくなってしまうなんて。恋愛とはとにも恐ろしい。

することがなく長身の身体を持て余し、布団の上をだらしなく転がる。

昔は暇潰しに遊郭へ行ったものなのに。
別にルキアに規制を強いられた訳でもなく、絶対バレない自信はあったが全くそんな気にならない。

「ほんま、あかんことばっかりやん・・・」
執着心、独占欲、そして忠誠。
ルキアを介して知った感情は面倒で煩わしく取り扱いも難しい。
しかし今更全て投げ捨てて、ほとんどの感情のない以前のようには戻れない。

難儀なことや。

なのにルキアを失うことは、死ぬよりツラい真の闇に沈むこと。

うつ伏せになり、庭の木々を叩く雨を見ながらギンはボンヤリと考える。
とにかく明日も普通に接しよう。
これで一日でも会わずにいたら、あの天邪鬼で強がりな彼女は気を病むに違いないから。
僕は大丈夫。何度拒絶されても立ち向かう覚悟はとっくに出来ている。
稀にヘコむ事もあるが、自分が正常な生き物であると確認できているようで決して厭なだけではない。

全てはルキアの為に。

なんとか気力を奮い立たせ、そう覚悟を決めたときだった。
ギンは素早く起き上がり構えると、布団の上で聞き耳を立てる。

玄関先に気配を感じたからだ。
まさか三番隊隊長の家に盗みに入る命知らずはいないだろうが、一応は確認してみる。

霊圧を探ったギンの目は驚愕に見開いた。

信じられない思いで玄関まで一気に走り、思い切り引き戸を引き開けた。
そして玄関前に佇む小さな人影に向かって多少裏返ったような声を上げた。

「ルキアちゃん?!君どないしたんや?!」

ルキアは全身雨に濡れ、俯いたまま顔をあげない。

「そないに濡れて・・・とにかく、早よ家の中入り。」
反応しないルキアに焦れ、ギンはルキアの肩を抱き家の中へ引き入れた。
その僅かな時間の内にも、久しぶりに触れたルキアの感触にギンの内は喜びの声を上げている。
少しでも力を入れたら壊れてしまいそうな小さな肩の儚さにギンはなぜか泣きたくなった。
とにかく雨が避けれるよう玄関内にルキアの身を置き、すぐに手を離したギンは家の中へと走り去り、
たくさんの手拭を手にすぐさま舞い戻る。


「とにかくこれで拭いてや。・・・家あがるんは厭やろうから、ちょぉ待といてな。お茶、沸かしてくるわ。」
素直に手拭を被ったルキアに下から覗き込むようにして話しかけると、
再び家の中へ入ろうとしたそのギンの背中にルキアは何も言わずに抱きついた。


「!!・・・ルッ、ルキア、ちゃん・・・」
驚きのあまり声は潰れギンは硬直した。

ルキアに抱きつかれた場所からギンの薄い寝間着は冷たく濡れていくが、そんな事が全く気にならない。
ルキアはギンの体に回した腕に力を込める。
ギンは腰の辺りにしがみつくルキアの身体を感じ、言いようのない感覚が全身に走り、堪らず身を引こうとする。

「ちょお、ルキアちゃん。これは反則や。・・・君に抱きつかれて平静なんかでいられんて。
僕もう君を傷つけたくないんや。な?後生やから手、離してや。」
子供をあやすような口調で、回されたルキアの腕を軽く叩き、解放を促がすがその腕から力は抜けない。

「・・・なぁ、こんな事、言いとうないけど、僕禁欲生活長いねん。
こんなルキアちゃんにくっつかれたら、ほんまにツライんや。だから堪忍してくれへん?」
「・・・っ」
ルキアの口が動き、何か言葉を発したようだが雨音に消され聞き取れない。
「ルキアちゃん?雨に消されてもうたみたいや。・・・なんて言うたん?」
「・・いい。」
「いい?・・・ってなにが?」
自分でも確認するように、ルキアは一句一句言葉を繋げた。

「・・・お前の、好きに、すれば・・いい。」

ルキアの言葉にギンは驚愕して頭が真っ白になる。
短い沈黙の後、ギンは声音を落として更に問う。

「僕の好きにするって・・・意味はわかっているんやね?」

「・・・わかっている。」

「そしたら、もう、止めることはできんよ?・・・ほんまにええね?」


「・・・だから、ここに来た。」


ルキアの言葉が終わるか終わらないかの早さで、ギンはルキアの腕を外し、素早く抱きしめその唇に吸いついた。
ルキアの唇は雨に冷たく濡れ冷え切っていたのだが、その感触は柔らかく甘い。
己の熱でルキアを暖めようとするかのように、冷たい身体を抱きながらギンは夢中になって何度も口付けを行う。
やがて激しい口付けに熱くなったルキアが荒く息を乱す頃、玄関を閉じギンはルキアを抱きかかえると奥の寝屋へと移動する。
ギンの腕に大人しく抱かれたルキアはやや不安げに瞳をうつろわす。
覚悟していたのに、恐くてしかたがないように。

ギンはすぐ心中を察すると、できる限り優しく微笑みかける。
「心配せんでも恐いことなんかせぇへん。・・・ただ、もう止め言われても無理やで。それだけは覚悟しといてな。」
「っ・・・わっ、わかっている。」
ルキアは最後の強がりのように、睨むようにギンを見上げた。
とてもこれから甘い秘め事を行うとは思えない。
ギンは苦笑するが、それがまたルキアらしく嬉しくも思いながら長い廊下を大股で歩き部屋へと急ぐ。

 

 

ギンは開け放していた障子を閉じ、己で乱した布団を軽く整えると後で立ち尽くすルキアへ声をかける。
「脱がしたげようか?」
「!!・・・自分で、やる。」
ルキアは濡れた装束の帯に僅かに震える手でゆっくりと解き始めるが、濡れているせいか結び目が固く縛られなかなか解けない。
見ていたギンは正直焦れて、ルキアの手から結び目を奪う。
「ルキアちゃんは不器用やね。僕が解いたる。」
「じ、自分で出来るわ!」
頬を赤らめ怒るルキアの目の前で簡単に結び目を解きほぐすと、水分を含んだ袴が重たげに足元に落ちた。

「!・・あっ!」
反射的に羽織っている装束の前を掻き合わせ、晒された細い足を隠そうとしながらルキアの体は細かく震えた。
「・・・ルキアちゃん。自分で脱げんやったら、僕が脱がすよ?」
優しく、でも有無を言わせぬ圧力を感じる声でギンはルキアを促がし、自分も着ていた寝間着を足元に落とす。
つい先程想像していたギンの裸体を目の前にして、ルキアは頬を染め瞳を逸らす。
そして観念したように固く目を瞑ると、恐る恐る襟元を開きゆっくり腕を引き抜いた。

夢やないか。

ギンは黒い装束から現れた真っ白な肌を恥ずかしげに晒すルキアを見て、何度も同じ事を考えていた。
闇に浮かぶルキアの裸体は触れてはならない完全な神聖さを纏わせ、そこに佇んでいる。
例え禁忌であったとしても、ルキアを手に入れられるなら地獄でもどこでも落ちていい。
ギンは本気でそう思いながら、ルキアを布団に押し倒すと再び熱を生む熱い口付けをしながら、
片手で冷たい体を撫で擦る。

「ふぁっ!・・・ひっ!あっ、やぁんっ・・・!」
時々わざと唇を離すと、その度にルキアから艶やかな嬌声が溢れ耳でも楽しませてくれた。

「・・・これや。」
うっとりと陶酔したギンの声がこぼれた。

この顔が見たかった。

深い菫色の瞳を涙で潤ませ、柔らかな唇を快楽にわななかせ甘く乱れた朽木ルキア。
普段の冷徹さなど微塵も窺えないほど、その表情に艶があり女であることを主張している。
しかもあの罪深い夜と決定的に違うのは、ルキアがこの行為を同意の上で身を委ねている。
身体だけではなくその高潔な心まで己に預けてくれた。
ギンは信じられない程の膨大な幸福感に酔い、明日には死んでしまうのではないかと本気で考える。
そしてこんな夢を見て死ねるなら、それでもいい。そうとも思った。

ギンはルキアが幻ではないと実感する為に、その唇から口内を舌で舐め絡ませては胸を揉みしだく。
「!!っくぅ・・・あぁっ・・・やぁぁ・・・」
深く深く口付けながら胸の頂をすりあげると、ルキアの喉から一際高く声が上がる。
「ルキアちゃんは真っ白でほんまに綺麗やね。お人形さんみたいやわ。」
「たっ、たわけたことをぬかすな!莫迦者が!・・・あっ!やぁっ!」
やっと熱い口付けから解放されたばかりの口から、いつもと変らぬ強気な科白にギンは微笑み、
固く突き立つ桜色の頂を意地悪く甘噛んだ。
当然ルキアの口からは甘い叫びが上がり、びくりと身体が反応する。
ギンは舌先を器用に動かし、敏感な頂を押したり転がしたり時には吸い付き弄ぶ。

その動きに翻弄され、ルキアは自分のものとは思えぬ甘い悲鳴を聞くに堪えかね、
片手で口を覆うと指を噛み声を上げることを必死で耐えた。
しかしそれを許す程ギンが甘い訳はなく、上がる声がくぐもったと知り顔を向けると、
ルキアが怯えてしまわないよう力を加減しつつも簡単に両手を拘束した。

「なっ!なにをする!!」
「堪忍や。僕はルキアちゃんの声がもっと聞きたい。だから、隠したりしたらあかん。」
そう言うと細い首筋に舌を這わせる。
ルキアの身体はギンから与えられた快楽による熱で身体はすっかり火照り、
白い肌が淡く朱を帯び汗でじわりと湿っていた。
ギンの舌は首から鎖骨、胸から下腹部へと段々に下降していき、足の付け根の内ももに強く吸い付き印をつける。
「・・・ここならええよね?」
「あぁっ・・・莫迦者が・・・」
舌であらゆるところを舐められ、その刺激にルキアは力も抜け早くも息があがり腰が悩ましげに引かれる。
ルキアの拘束を解くとギンは自分がつけた赤い花びらのような印を指で撫で、ふーっと息を吹きかけた。
その刺激にも身体を震わせルキアは従順に反応する。

「ルキアちゃんは僕のもんや・・・」
心の底から嬉しそうに呟くと足を割り開き、愛液で溢れたルキアの秘部を眼前に開け広げた。
「やぁっ!だっ、だめだ!見るな!市丸!見てはならん!!」
ルキアは狼狽して上半身を起こしギンを押し返そうと必死になり、足を閉じようとしたがうまくいかない。

そんなルキアの行動には意も介さず、ギンは蜜壷へと指を一本潜らせてみた。
ぐぷっ
そこはひどく満足気に卑猥な水音をさせながらギンの指を花びらは咥え込み、ルキアは羞恥に顔を強張らせる。
「あぁ・・・ルキアちゃんの中ぁ、熱くて指が溶けてしまいそうやぁ。」
「ばっ、莫迦なことばかり・・・あっ!うぁっ!・・言うな・・・!ひっ?!あああぁぁっ!!」
ギンの長くて繊細な指は花の内壁を撫でながら出たり入ったりを繰り返す。
その指の律動にあわせ、ルキアは身体を強張らせビクビクと反応しては悲鳴のような嬌声をあげた。
秘部に指を突き立てられながらも出てくるルキアの強がりに、ギンはややあきれもする。
絶対服従などしない。その意志は見事ながらも少々挫きたくなる誘惑に駆られ、ギンは指を二本に増やした。

「ひゃぁっ?!あっあっあっ!!やっ!だめっ!はっ、激しくするなぁっ・・・!!」
語尾を震わせ、ルキアは蜜壷で蠢く指に翻弄され狼狽した。
二本に増えた指をなんなく飲み込んだ蜜壷は、更に多くの蜜を溢れさせ水音を響かせながら悦びを表す。
ギンの空いていた親指は隠れた蕾を捕らえ、小鳥が啄ばむように軽く触れては焦らせてみせる。
「ひぃっ?!やっ、だぁ・・・そこっ!ああっ!感じすぎる・・だめぇ・・・」
切なく腰をくねらせ、強すぎる快楽から逃れようとするルキアをギンはしっかりと捕まえていた。
今やルキアはあられもなく啼き喘ぎ、激しい快楽の波に完全に飲み込まれてしまわないよう必死であった。
溢れ出た蜜は太ももを伝い、敷かれた布団を濡らすまでになっている。

「やぁっ!!いっ、市丸ぅ・・もっ、もう許してくれ・・これ以上は・・・おかしくなる・・・」
律動を繰り返す腕をルキアに押さえられ、ギンはそこで我に返った。
こんなに無我夢中で行為に没頭したのは初めてで、ギンは内心の気恥ずかしさを誤魔化しルキアの唇を深く吸う。

「・・・そしたら、もうええかな?」
十分過ぎる前戯にルキアはことが終わったかのように身体をぐったりと横たわらせ、か弱く頭を横に振ってみせる。
「少し、休ませてくれ・・・なにか、身体が、おかしいのだ・・・」
はぁはぁと息を弾ませ、ルキアは潤んだ瞳で懇願するが、ギンが自身を押し付けると濡れた花びらは楽々と頭を飲み込み誘う。
「僕が我慢できても、ルキアちゃんの方が、我慢できひんみたいや。・・・僕が動くさかい、ルキアちゃんは寝とってええよ。」
ギンがゆっくり腰を押し付けると、ささやかな抵抗感はあるものの割合スムーズに侵入を開始する。
「?!ああぁんっ!・・・やっ、挿って・・くるぅ・・・」
「・・っく!・・・あぁ、こないに濡れても少しキツいなぁ。
ルキアちゃんの中は狭くて熱くて、よう締まる。・・・めちゃめちゃ気持ちいいわ。」
「ばっ!莫迦・・あぁっ!・・・やだぁ・・・だっ、から、ふぁっ、そんな事、言うな・・・ひゃぁっ!だめぇ!!」

ルキアは根元まで完全にギンを受け入れると、それだけで追い詰められたような表情で天井を見上げる。
「・・・僕、ルキアちゃんに全部食べられてもうた。」
わざとらしく卑猥なギンの物言いにももう反応出来なくなったルキアは、荒く息を弾ませ自分を貫く異物の感覚に神経は集中していた。
今夜で二度目の行為でもありギン自身はルキアの器には大きく、挿入は圧迫感と痛みを伴っていたが、
それだけではない言い知れぬ快楽の熱も生みルキアをたまらない気持ちにさせる。

「そしたら・・・動くよ?」
五年ぶりの挿入、しかも相手は恋焦がれた朽木ルキア。
挿入だけで頂点を極めてしまいそうな程の高い達成感。
外からは微塵も感じさせないが、ギンは内心で狂乱していた。
それでもルキアの様子を見ながらギンは、細心の注意を払い痛みを排除し的確に快楽を与えれるよう努力する。
最奥まで貫いた自身をゆっくりと引き出し、半分位戻すとまた最奥まで刺し貫く。
ルキアは最初痛みにしかめられきつく噛まれた唇も、幾度か律動を繰り返すうちに少しずつ固さが解け、
僅かづつでも快楽を示す表情も浮かびだしてくる。


ルキアが己で感じている。

この世界で最も神聖な少女を汚してしまったような背徳感と優越感が混ざりあい、
それはギンの全てを昂ぶらせ背筋に快感がはしった。

ルキアが愛しくてしかたなく、その娘に行為を許されたギンは自分を見失うまでにルキアの全てに溺れていた。

ただ身体の得る快楽を求めただけの、今までの情事とは根本的になにもかも違っている。
ギンの律動は次第に動きを早め、それにあわせてルキアも高く低く甘く切なく啼き濡れる。
ギンは繋がった部分が擦れあい生まれる快楽を貪欲にむさぼり、まだまだ喰らおうとルキアを攻め立てた。
貫かれたルキアの秘部から溢れた蜜は、打ち込まれるたび飛沫を散らしそこからギンも濡れ湿らせる。

「いちっ・・市丸ぅ・・・もう、ダメだ・・・もう、おかしくなってしまう。」
先にねを上げたのはルキアの方で、長時間高い感度を保った身体から汗が流れ、
肩を触られただけでも反応してしまう程になってしまった。

「市丸なんて寂しいわ。名前、呼んでくれへん?」
「!!ふああぁぁっ!」

ぐったりとしたルキアをギンは繋がったまま膝の上に抱えあげると、より深く挿入した自身が秘部の最奥を叩く。
角度を変え別の場所を擦りながら、より深くに捻り込まれる感触に激しく感じた。
それはまるでルキアが自分から離れないよう、楔を打ち込んでいるようでもある。
向かい合わせに密着して抱き合うと、ギンは小さなルキアの身体ごと揺すって深い深い挿入を楽しんだ。
「ひぃあっ!!あっあっあっ!!やぁっ!こんな・・・もう、だめぇっ!!」
既に限界を飛び越えたルキアは最後の咆哮のように、激しい打ちつけに啼き喚く。
まろやかな曲線を描く尻をいやらく撫でながら、ギンはルキアの耳元に口を近づけ甘く囁いた。

「ギンって言うてみ?そしたら、もう勘弁したるよ?」
「はぁっ!あっ、ギン!お願い!ギン!もう、許してぇ・・・」
ひどく甘く、まるで成熟した女のような声にギンは内心驚きながら、ルキアの艶やかな黒髪を撫で軽く口付ける。
永遠にこうしていたいほど身体も心も満たされる絶対の快楽。
心底名残惜しくはあったが、ギンも腰に震えを感じ限界が近いと知っていた。
「・・・ほんまは僕ももうあかん。・・・もう少しだけ、辛抱しとって。」
「!!あぁっ!」

ギンは再びルキアを布団へ押し倒すと、今までで一番最速の律動を開始し、
それを受け止めるルキアの内部も収縮を始めるとあっという間に先に達し、間もなくギンも溜まった熱を全て吐き出した。






空を覆う雨雲と共に闇も去り、夜明け前の空が暗く輝く。
ルキアは薄っすらと目を開けると、間近にギンの寝顔があった。
瞬間驚愕に目を見開くが、昨夜の出来事がすぐに甦りルキアは叫びを飲み込み口を引き結ぶ。
それからギンの様子を窺うと、起こさぬよう身体に回された腕を外しそっと床から抜け出した。
布団の側に散らばった装束を手にすると、昨夜の雨で濡れた衣装は冷たく腕を通すことが躊躇された。

「挨拶もなく帰るんわ、冷たいんやないの?」
「?!ひゃあぁぁぁっ!!!」

突然なんの気配もなかった背後から抱きすくめられ、ルキアは驚きのあまり大声で叫んだ。
お互いなんの羽織もなく、朝から裸体で密着される卑猥さにルキアの顔は赤く燃えた。

「おはようさん。朝起きてルキアちゃんが居るなんて幸せやなぁ。」
呑気に言いながらギンはルキアの首筋に顔を押し付けてくる。
「おっ、おはようございます。・・・申し訳ありませんが、この手を外して下さい。」
「いやや。」
きっぱりと簡潔にしかも即座にギンは断り、変わりに目の前の首筋を舐めあげた。

「ひぃゃっ!!やっ、やめろと言っているのだ!」
「いやや。」
「なっ!!・・・やっ!なんだその手は!いい加減離せ!!」
「せやから、いややって。」

首筋にかかるギンの息が熱く、ルキアにまとわりついた腕はいつのまにか胸を撫でている。
「貴様・・・!調子に乗るなよ!手を離せ!!」

「・・・ルキアちゃんが、悪いんや。」
怒りと羞恥で燃えたルキアがはっとする程、ギンの声はやけにさびしそうに聞こえた。

「・・・なんで、勝手に帰るん?・・・あの日みたいに。」
「そっ、それは・・・」
「そんなん、寂しいやんか。」
ルキアの腰に巻きついた腕に力が篭る。
「す、すまない。そんなつもりはなかったんだが・・・
ただ・・・は、恥ずかしかっただけなのだ。」
ギンの心中を察し、自分の非礼をルキアは素直に謝った。

あの日と同じように逃げるように帰るなど、またギンを傷つけてしまった。
しかしギンは顔をあげるとルキアの顔を自分の方へ向け、その唇を奪い両胸の頂を指先ですりあげた。
「ひぃうっ?!!ふっ、ひゃうっん!!」
塞がれた唇でルキアは抗議の声を上げるが、ギンは攻撃を激しくするばかり。
ルキアの身体がびくびくと震え始めた頃、ギンはやっと解放し優しく抱きかかえた。
ギンの腕の中でルキアは熱っぽく濡れた瞳でギンを見上げた。

ギンはいつもの飄然とした笑顔でルキアに笑かけると、額に軽く唇を押し当てる。
「そしたら・・・今日は一緒に寝て過ごそうや。」
「・・・なっ!!」
再び布団の中に引き入れられたルキアは、またしても甘い悲鳴を上げ続ける事になった。

瀞霊廷に出向するまであと数時間。
果たして二人が間に合うかどうか、ルキアは悪戯狐に捕らわれてやはり自分は早まったかもしれないと、
自分の叫びをどこか遠くに聞きながらぼんやりと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<back

裏 top

いいわけ
 ギンがギンじゃないです・・・お読み下さった方達に受け入れてもらえるのでしょうか?こんなギン・・・
 とにかくこれで大団円?このシリーズは終了になります。つまりギンはルキアにラブって生きていけばいいんですよ!
 ・・・でも今考えてるギンルキも、基本こんな感じなんですけど、それでも書いていいでしょうか?(不安)
 ちなみにタイトル「狐が落ちる」は諺で、狐の霊に取り付かれた状態から正常に治ること。だそうです。
 タイトル未定で書き始めたのでなにかないかと探したら、ギンがどんどんいい人になるので、この諺を使いました。
 2008.5.19

material by 薫風館

inserted by FC2 system