25日の夜。
夜勤で瀞霊廷内を見回っていたルキアの目の前に、突然日人影が現れた。
「めりぃ〜くり〜ま〜すや〜☆ルキアちゃん!」
なんの気配も感じなかったルキアは、驚きで息をのみ、目の前に立ち塞がった長身を仰ぎ見る。
それから静かに息を整え、できるだけ無表情に対応しようと努力した。
「・・・どうかされたのですか?市丸隊長。」
「なんやしらんの?12月24日は現世で『くりまーす』言う日らしいんよ?」
「・・・もしかして、『クリスマス』のことですか?」
「そうそれやん!なんやルキアちゃんは物知りやねぇ。」
「今日は24では、ありませんよ。」
「細かい事言いっこなしやん!・・・そしたら、これも知っとる?」
「なんですか?」
訝しむルキアの手を取り、ギンは上機嫌で外へと連れ出した。
「ええから早よぉ!こっちこっち!!」
「・・・外?なにもないでは、ないですか?」
三番隊の暗い庭に二人は立ち、ギンはおもむろに振り向いた。
「ここで、ええんよ。」
「なにが・・・ん?・・・・んんっ?!」
困惑するルキアの頬を手で挟み、唇を重ねた。
短い時間で唇を放し、間近で見合うとギンはにっこり微笑んだ。
「柿の木の下でキスされても、怒ったらあかんらしいよ?」
今された行為の驚きと衝撃に、真っ赤になって一瞬放心したルキアは、すぐ我に返ると、即座に瞳を怒らせた。
「〜〜〜それは、宿り木のことです!!!」
バチンッ!!
怒声と共に反射的にルキアの手が動き、その手は確実にギンの頬を捉え辺りに良い音を響かせた。
怒りながらルキアは振り向きもせず隊舎へと戻っていき、残されたギンは赤い頬を押さえてひっそり笑う。
「・・・ほんまに・・ルキアちゃんは、物知りやねぇ・・・」
尺魂界では必要ない、聖なる夜に絡めた悪戯。
次はなにをしたろうか?
懲りない狐は、すぐにも次の算段をし始める。
ルキアの受難はまだまだ終わらない。