『丸の内 サでぃすティっク』(※現代パラレル)
待ち合わせ場所が丸の内なのは、ギンの勤めている会社がそこにあるからだ。
ルキアは待ち合わせ時間十分前から待っており、十分オーバーされ合計二十分待っていたことになる。
人ごみを掻き分け胡散臭い笑顔を浮かべた痩せた体躯にスーツ姿の長身の男が近寄って来ると、ルキアは渋面を作って言った。
「遅い!」
「あぁ〜すまんなぁ。出よう思うたら、お得意様から電話かかってきてもうてなぁ〜」
あまりすまなくはなさそうに、ギンはいつも通りにこにこしながら言い訳をする。
口先だけは超一流の若手営業部の期待の星は、本当に古くからの先輩を押しのける勢いで契約を決めてきている。
ルキアは思う。
全くこいつの言うことだけには、気をつけなくては。
にこにこと人好き顔で近づいて、油断しているといつの間にかギンの思惑通り事が運んでいる。
ギンと付き合うようになって半年。
ルキアは彼から受けた数々の屈辱的な行いを思い出しては、恥ずかしさに唇を噛むことになる。
ギンは機嫌の悪いルキアの手をとり、彼女のために予約しているレストランへと導き歩き出す。
小柄なルキアは、半ば引っ張られるような足取りでギンに付いてく。
「今日の所はなぁ。会社の女の子達が絶対行きたい、言うてたとこでな。海外の有名な店の初出店っちゅうことらしいんや。」
「・・・知ってる。ニュースで見たからな。」
食べることが大好きなルキアの為、ギンは普段のなんでもない日でも一流レストランで食事をさせてくれた。
しかしルキアは面白くない。
今から行くレストランは、ギンが会社の女の子達と楽しげに談笑していて得た情報だからだ。
ギンと付き合ってルキアは、案外自分がヤキモチ焼きなのことを発見して驚いた。
しかしそれも仕方あるまい。と、ルキアは自分に言い訳をする。
なにしろこの男、初対面だろうがなんだろうが、馴れ馴れしく近づいてあっという間に取り入る名人なのだから。
あれだけその様子を目の前で見ていれば、普段どんな行いをしているかわかったもんではない。
ギンはまだ機嫌を損ねたままのルキアの様子を窺い、ひっそりと笑みを深くする。
そして繋いだ手をわざとらしく大きく振って、道行く人々の注目を集めてから嬉しげに大きな声で言った。
「そしたら明日は休みやし、早よぉ食事済ませて今日はいっぱいエッチしよーなー☆」
「!!なっ・・・!!!」
ギンの言葉にルキアはギョッとして振り仰ぎ、ルキアだけでなく周囲の人間が二人に注目を集めた。
見る間にルキアの顔は恥ずかしさで林檎のように真っ赤に熟れていき、慌てて手を放そうともがき始める。
しかしギンはしっかりとルキアの手を拘束したままだ。
「ば、莫迦ものめ!!!そ、そんなことを大声で言う奴がいるか?!」
「えぇ?なんで?今日はしてもええんやろ?」
「だから!そんな事を言うなと言っている!!!」
ギンは慌てふためく愛しい恋人の姿に心から満足する。
どんな時でもルキアは可愛いが、こうして怒り慌てて恥ずかしがる様は本当に堪らない。
だからついつい悪戯が過ぎてしまうこともしばしだが、この遊戯だけは譲れない。
可愛い可愛いルキアちゃん。
僕の腕の中でもっともっともがけばいい。
いつものように口先だけで玩ばれ、ルキアは瞳に涙まで溜めて往来の真ん中で力一杯叫んだ。
「この、性悪狐!!!」
※拍手用SS・現代パロにしてみましたが、お題には合っていたんでしょうか・・・?
色々無理矢理臭いのは、本当に無理矢理設定だからでしょう・・・。残念!
2008.8.14