『ケいコく』




あ。とルキアは思うと同時に、頭の中で警報が鳴り響く。





ケイカイセヨ。ケイカイセヨ。ケイカイセヨ・・・・・





それは既に身についた防御本能。

気配を察するより早く、警報が鳴り出す。



「こんにちはルキアちゃん。どこぞにお使いなん?」



「市丸・・・隊長・・・。」



そしてその警報は正確に働いていることを示し、要注意人物がルキアの前に現れた。





三番隊隊長、市丸ギン。





その姿、その声、その動き・・・

ルキアは彼の全てを嫌悪していた。

出来る限り近づきたくはない、話したくもない唯一の存在。



なぜこんなにも彼に警戒心を抱くか自分でも理由はわからない。



なので理由を聞かれれば、生理的に受け付けないとしか言いようがないであろう。



ルキアは一番隊舎へ向かう途中、出来る限り三番隊の隊舎を避けて通って来たのになぜ見つかったのか疑問に思う。



答えはギンがルキアの霊圧を感知し、わざわざ出向いてきたからだがルキアには知る由もない。



ギンはルキアに警戒されていることを知っている。

心から毛嫌いされていることも。



しかしそれはギンからすれば関係ないこと。

自分がルキアを好きで、構いたいからそうしているだけなのだ。



この執着心については、ギン自身もはっきりと説明は出来ない。

ただ、嫌われていてもルキアに近づきたい想いは本物だ。



ギンは笑ってルキアの抱えていた、たくさんの書類を覗き込む。

ルキアはやや青ざめ、それでも必死に平静を装っていた。



「・・・一番隊舎へ書類を、届けに参るところです。」

「ふぅん。ずいぶん遠回りして行くんやね?うちとこ横切ればすぐやのに。」



理由を知っていながらも、ギンは意地悪くルキアを翻弄する。



一瞬黙ったルキアは、慌てて周りを見渡し、目に留まった木を指し示した。



「は、花が!あの花が見たかったので。」



言われ振り向いたギンの目に、うらさびれた木に申し訳程度の花が2〜3ついた木が目に入る。

ギンは何も言わずしばしその木を眺めてから、妖しい笑みを顔一杯に浮かべた。



「ルキアちゃんは花が好きなんやね。そしたら僕とこおいで。たくさん咲いてるの見せたるわ。」

「えっ?!あ、あの・・・!」





ケイカイセヨ。ケイカイセヨ。ケイカイセヨ・・・





ルキアは予期せぬ展開に怯え瞳を見開いた。



警戒音が最大級に頭の中で鳴り響く。



しかし時すでに遅く、ルキアはギンの腕の中に納まっていた。

先程までルキアが抱えていた書類が溢れ、その場で風に舞い散っていく。





ケイカイセヨ。ケイカイセヨ。ケイカイセヨ・・・





ルキアの頭の警報は鳴り続け、それは夜になるまで止むことはなかった。











※拍手用SS・久しぶりにギン嫌われバージョン。これはこれで面白い・・・。
ギンはどんなにルキアに嫌われても、絶対めげずに追いかけるだろーなーと思って。

2008.8.14

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