『幸ふく論(悦楽編)』




目の前でルキアが幸せそうに白玉を頬張っている。



その姿を眺めつつ、ギンはしみじみ思う。





幸せやなぁ。





長年毛嫌いされつづけたルキアと、粘り勝ちとも言える根気良さでとうとうお付き合いに発展させた。



苦節ウン十年。

でもそれは、百年かからなかっただけマシなのかもしれない。



ギンの屈折した愛情表現は、とてもではないが常人であれば誰にも受け入れてもらうことは難しい。



それがルキアであればなおのこと。



彼女は初めて会った時から、ギンの全てに警戒心を露わにしていた。



最初はそんなルキアの態度を面白く思い、からかい半分でわざとちょっかいをかけていた。





まさかそれが恋に変わってしまうなど、さすがのギンも考えていなかった。





しかし、なってしまったものは仕方なく、自覚症状が表れてすぐギンは行動に移った。





ルキアを我がものにする為に。





シスコン兄貴に忠犬幼馴染。挙句病弱であるが故、なにかと側に置いておきたがる直属の上司。

ルキアを取り巻く男達は一癖も二癖もある兵揃い。



しかしギンはそれらを勝ち抜き、ルキアのお相手として地位を確立した。



恋する一念ダイヤモンドさえ破壊する威力。



今ルキアはギンの私邸の縁側に腰掛け、大好きな白玉を嬉々として食べている。

その様子を間近で眺め、ギンは自然と頬が緩む。





幸せやなぁ。





だが、しかし。



この幸せもそろそろ次の段階に進んでも良いのではないか。



ギンは大いなる下心とゆう野望を抱き、今日の休日をルキアと共に過ごしている。



ルキアが側に居てくれればそれだけで幸せな幸福論は、とうの昔に満たされた。



ならば次に目指すは・・・悦楽編。



ギンはルキアに向かい、なるべく穏やかに微笑みかける。



「なぁ、ルキアちゃん。今日は少し変わったことして遊ばへん?」

「?変わったこと?」



ルキアの無垢な瞳が真っ直ぐに見抜いてくるが、そんなことではギンは揺らがない。





この日、幸ふく論(悦楽編)を達成できたかどうかは・・・ギンの頬にくっきりついた小さな手形が物語っていた。











※拍手用SS・可愛いお題なのでもっとラブ展開目指したかったんですが、なぜかギャグになってしまったよ・・・。

2008.8.14

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