例えば通学バスに乗って、隣に座ること。

昼食を準備してくれて、一緒にとること。

帰る時、いつも同じ場所で待っていてくれること。

道路を歩く時、車道側には自分が歩いていること。

帰りが遅くなると、必ず起きて待っていてくれること。




どれもこれも、あたりまえになった日常。






・・・でもこれは、あたりまえの風景なのだろうか?

 



『 日常風景 』



 
RUKIA Side

ルキアが黒崎家の押入れ住まいをして、三ヶ月の時が流れた。


一護は学生と死神代行の両立に慣れ始め、ルキアは現世で高校生としての生活に慣れ始めていた。

最初は紙パックについたストローの使用方法すらわからなかったルキアも、
今では一人でコンビニに買い物が行けるまでになっている。



ここだけの話、ルキアは今の生活かなり気に入っていた。


尺魂界での気詰まりな貴族生活や、ルキアの孤独を知るものなど、ここには誰も居ない。

オレンジ頭の生意気な人間の少年は、口調こそ乱暴だがその行動や態度の端々に彼の優しさを感じることができ、
ルキアは短い期間とはいえ、彼に絶対の信頼を寄せるようになっていた。



そして時々考える。

この日常は仮初に過ぎない。


自分が力を蓄えるまでの、一時の仮住まい。



なのにこの居心地の良さはなんだ?



この安らぎは?



そして思う。



一護の優しさは、あたりまえのものなのか?



ルキアが高校へ転校してから一ヶ月、一護はルキアに学校内で話しかけることを禁じていた。

最初は気にしないと豪語していた彼だったが、ルキアとの噂が大きく広がり過ぎ、
周囲の好奇と嫉みに我慢しきれず、緊急時以外学校内での接触は禁止すると言い渡されていた。



それが、二ヶ月を過ぎた頃から緩やかに変化していった。



例えば、通学バスで席が空いていると普通に並んで座るようになっていたし、昼食を一緒にとることも当然の行為になった。
また、別々に下校していても同じ場所で待っているし、並んで歩くと意識して自分が車道側を歩いているし、
用事があって帰りが遅くなると断っていて、必ず起きて待っている。




一度ルキアの方から、言ってみたこともあった。

「一護。私もだいぶこちらの生活に慣れたことだし、そう気にかけずともよいのだぞ。」

それは当然ルキアなりの気遣いであり、ただでさえ死神代行とゆう責務もきちんとこなしてくれている少年に対し、
日々の生活をもう少し楽に過ごして欲しいので、自分のことで手を煩わせる事が申し訳なく思ったからだ。


すると一護はやや決まり悪げに、口ごもった感じでこう答えた。

「あ?あぁ・・・まぁ、そうだな。」



しかし次の日、バスに乗った時一護は相変わらず隣の席を示して言った。

「ほら、座れよ。」



だからルキアもそれ以来この件について、何も言わなくなった。
最初から一護が騒いでいたことだから、ルキアにとってはどちらでもよかったのだ。


しかし、今は違う。










一護の優しさ、存在があって当たり前。










そんな、日常風景。











 
ICHIGO Side

三ヶ月前から俺の部屋の押入れの中に、未来の猫型ロボットならぬ死神娘が住み着いた。

お役立ちアイテムを出してくれぬばかりか、厄介ごとと我が侭ばかり強制的に俺に差し出してくる。


それだけでもたくさんなのに、そいつは学校にまで現れ、死神代行なんてもんまで背負わされ、俺の生活は一変した。
おまけにルキアとの仲を変に話のネタにされたり、正直疫病神だと思った時もあった。

初めは嫌で面倒で、俺の平穏な日々を返せ!と叫びたくなったもんだけど、


今は違う。




ルキアの姿が、目に映らないと落ち着かないなんて。



現世での生活に慣れぬルキアのサポートをするのが嫌じゃなくなり、認めるのは癪だが今では進んでみるようになった。


きっと幼い妹達の面倒をマメにみていたから、同じ背格好のルキアに対しても条件反射なのだろう。

たぶん。






・・・それ以上の思いなど、ないはずだ。





でも最近おかしいんだ。ルキアが浦原さんの所へ用事があって遅くなると言うと、
どうにも落ち着かず、必ず無事に帰ってくるのを確認するまで眠れない。



完全に一人きりになれる数少ないチャンスなのに、ルキアのことが気にかかり全然嬉しくなんかない。



一緒のバスで通学し、一緒に昼食を摂り、一緒に下校し、一緒の部屋で眠る。



あの姿を、声を、いつもいつでも無意識に探している。





理由なんてわからない。

ただ、ルキアのいなかった頃には、もう、戻れそうにない。











・・・戻りたくないんだ。










そんな、日常風景。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いいわけ
 なんの事件?も起こらない話を書こう!と思いました。
 なんでもない二人の日常風景。それは、一緒が当たり前になった日常。どちらかいないと落ち着かない。
 そんな恋愛感情に気付いていない二人の様子を描いてみようと。
 わざとラブラブするより、その一緒が当たり前感覚がもうすっごいラブラブなんじゃないの?!
 ってことなんですが、うまく表現できたでしょうか?

 2008.9.21

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