恋をした。

 

そう自覚した途端、平穏だった毎日が、

突然、

終わりを告げた。

 



『 バラ色の日々 』



 

風呂に入ろうと部屋を出た一護が階段から下りきると同時に、丁度風呂場の扉が開き、そこからタオルで髪を拭きながら小さな人影が現れた。

その人物を一護が目にした瞬間、

どくっ

と、一護の心臓は強く跳ね上がり、思わず息までもつめその場から動けなくなる。

しかしそんな不自然な様子には気付かず、髪を拭いていた人物は顔をあげ、気軽な調子で一護に話しかけてきた。


「お、一護。今から風呂か?私は先にいただいたぞ。」


ルキアに声をかけられ、一護はハッとして我に返る。

妹達と変わらぬ色気のかけらもないパジャマ姿でありながら、油断すればルキアに釘付けになってしまう視線を慌てて外し、
一護はわざと無愛想に不機嫌そうに声を尖らせた。


「居候の分際で、家のモンより先に一番風呂に入るなんていいご身分だな。てめー少しは遠慮しろ。」

「男のくせに小さな事を気にする奴は大成せんぞ。
それに今日はおじさまに薦めて頂き、家人より先に風呂をいただく事になったのだからな。」

「あぁ・・・なんだ、そうかよ。」

「いい風呂であった。お前も早く入って温まれ。」


お互い顔を見合わせれば自然と出てくるいつもの言い合いをノルマのように済ませると、ルキアは仏頂面で落ち着きなく視線を泳がせている一護の肩を軽くぽんぽんと叩き、
洗い立ての髪から漂う甘いシャンプーの香を残しリビングへと去って行く。

その香の甘さに一護の胸は締め付けられるように小さく疼き、名残惜しげにルキアの消えたリビングの方を切なげに見つめ、呻くように呟いた。


「あいつは気楽でいいよな。ちっ。こっちの気も、知らねーで・・・」


本当は随分と前から、なんとなくそうなのかもしれないと見当はついていた。
だが往生際悪く気のせいだと自分自身を誤魔化し、延ばし延ばしにしていたルキアへの恋心をハッキリと自覚すると、
一護を取り巻く生活は劇的に変化していき、これまでとはまるで別の世界になった。何気ない穏やかな日々は失われ、変わりに常に緊張感を保つ日常を手に入れた。

望んでもないのに手に入れた毎日は、ルキアの行動に反応して意識して、
その度に一護はどうしようもない気持ちで一杯になっているのに。

恋した相手が同じ屋根の下で暮らす環境は、想い通じ合う仲であれば二人で多少の不便も楽しめるというもので、
片恋では全てがこちらからの一方通行という立場に、一緒にいて嬉しい事よりも断然切なく苦しい事の方が多く、なかなか苛酷な環境である。

なんせ視線の先や手を伸ばせば触れられる距離に常に恋しい相手がいるのだ。
毎日の生活で常に気を張り休まる時がない。
だからといって、ルキアがどこかに行ってしまうと、どこに行ったか気にかかり、余計な詮索や嫉妬心に駆られ余計悶々とする始末。

そしてその意識の対象者は、こちらの想いなどお構いなしに、無防備な様子で周囲をうろつき、湯上りにパジャマ姿も披露してくれるのだから堪らない。

これはまさに、天国で地獄。

一緒に生活できることを喜ぶ反面、ルキアから全く男として意識されていない現実を突きつけられる毎日が重く一護に圧し掛かる。
だからといって、この気持ちをルキアに知られ、過剰に避けられる事態にも陥りたくはない。

青春ど真ん中な思春期らしい、悩み多き恋心が出した結論が、

現状維持。

という、男としてかなり情けなく差し障りのないものであるのも、仕方がないことであろう。

意気地がないだけと言われればそれまでだが、なにしろ同じ家で暮らすのだから、
思い切って告白をした挙句、フラれ気まずくでもなったらどうにも生活しにくくてたまらない。

だったら、だったらこの思いを押し殺してでもルキアには知られぬようにし、ただの仲間面してでも傍にいれれば、それだけでいい。
例えただの仲間としてであっても、ルキアが笑いかけてくれれば、それでいいんだ。


一護はそんな胸詰まる思いを吐き出そうと、ほぅっと切ない溜息を小さく吐き出す。
そして気持ちを切り替え、風呂へと続く脱衣所の扉に手をかけ、入ろうとした所でハッとした。

 

風呂・・・風呂・・・?・・風呂・・・って・・・!

 

ルキアが入った後の風呂かよっ!?

 

死神である彼女が現世で生活する体は本物ではなく、義骸という死神の魂を収める人形のようなものではあるが、恋する少年にとっては本物同然。
普段はこの気持ちを認識してから、風呂の順番もルキアの後にならぬよう気をつけていたのだから。

 

ルキアが浸かった湯船に・・・!

い、いや。だめだ。そんなのマズ過ぎる!

あいつの・・・ルキアの入った直後の風呂になんて、

俺が入れるはずねーだろ!

 

「なにしてるんだ一護?入らないのか?」

「!?」


訳のわからぬ興奮状態に僅かに手を震わせながら、扉を開け中に入れず立ち尽くす一護の背後に、一心が現れた。
一護は心臓が止まるまでに驚き、慌てて振り返る。


「なんだよ親父!いきなり出てくんじゃねー!」

「何言ってやがる。さっきから声かけてたのに、全然聞いてなかったのはそっちだろうが。」

「さっきから?そ、そうか。そりゃ悪かったな・・・」

「で?こんなとこでボーっと突っ立って何してんだ?入るなら早く入れ。後がつかえんだろ。」

「あぁ・・・いや。そ、そーいや見たいテレビあったし、風呂入んの後にしようかと思ってよ・・・」

「なんだ入らないのか?だったら、お父さんが先に・・・」


口ごもりながら言い訳をする一護の脇を、すっと一心が通り過ぎようとした途端、突然血相を変えた一護が一心に向け力強く拳を繰り出しながら叫んだ。


「お前はぜってー入んじゃねーよっっ!!!」

「へぶしっ!?」


一護の拳は見事に一心の横っ面を捕らえヒットしたが、それで倒れる一心ではない。
鼻血を一筋垂れ流しながら雄雄しく叫んだ。


「いってーじゃねーか!てめーなにしやがる!」

「うるせーよ!ヒゲゴリラはもっと後から入りやがれ!」

「許せん一護!偉大なる父の愛の拳をくらえ!」

「おぉっ!丁度むしゃくしゃしてたんだ!とことんやってやらー!」


こうなればあとは黒崎家ならではの過激なスキンシップとなり、一護も一心も大人気なく本気の取っ組み合いを繰り広げた。
この騒ぎにリビングに居た三人は顔を覗かせ、迷惑そうに繭をひそめる。


「ちょっとーお兄ちゃんもお父さんも煩いよー。」

「放っておきな遊子。二人共遊びたいんだから、気が済むまでやらせといてあげなよ。」

「だってテレビの音聞こえないんだもん。ルキアちゃんだってうるさいよね?」

「そんなことありませんわ。ご家族仲がいいのはとても良いことですもの。」


大の大人の男二人が本気でやり合う姿をルキアは微笑み、妹二人は呆れた様子でこれを眺めた。


「一兄は面倒だったらヒゲの相手なんかしないって。
わざわざ相手してやってるってことは、自分も暴れたい証拠。暴れて溜まった鬱憤でも晴らしてるんじゃないの?」

「そうだよね。なんか最近お兄ちゃんいつも苛々してるよね。なにかあったのかな?ルキアちゃんは、なにか知らない?」

「いえ。私は、なにも・・・・・」


冷静な夏梨の言葉に頷く遊子に問われ、ルキアはふっと表情を曇らせる。
そして、何かを思いつめたように唇を引き結ぶと、物憂げな瞳で一護をじっと見つめていた。

 

 

 


「あー!つっかれたなー!」


今日も一日いっぱいに溜め込んだ鬱積を、腹から吐き出すように叫びながら、一護はベットの上へと倒れこむ。


「って〜〜〜!?親父のやろー。本気で殴ってきやがったな。」


先程の小競り合いで負傷した顎をさすり、一護はぶつぶつと文句を呟く。
しかしここ最近の鬱屈した気持ちを一瞬忘れ、暴れたのは良かったかもしれぬと思っていた。

あの後結局、妹二人を先に入れてからやっと、一護も風呂に入ることが出来た。
こんな小さな事にまで意識し、生活するのだから毎晩くたくたになっていた。
そしてその緊張が解けるのは寝る寸前の今の時間で、今頃はルキアも妹達の部屋にしつらえてもらったベットで休んでいることであろう。

これには正直助かった。
以前のように同じ部屋で四六時中一緒であれば、青少年らしい健全なる妄想力を発揮し、本気で夜も眠れなくなっていたであろう。
もしまだルキアがこの部屋の押入れで寝ている状況であれば、一護は本当に一時も気が休まることがなかったであろう。
なんてそうは思いながら、気持ちのどこかで、僅かに寝室が離れてしまったことを惜しいと思う気持ちもある。

 

恋する男心も女心に負けず、
なかなかに複雑だ。

 

ともかくこれで、今日の苦行は終了だ。

あとはゆっくりと休養し、明日の苦行に備えねばならぬ。

「ふあっ。ねみぃ・・・」

緩みきった緊張感に、すぐにも眠気は一護の元へ忍び寄り、瞼を重くさせてくる。
一護が逆らうはずもなく、意識を失うように眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

どれ程眠ったのであろう。

真夜中、一護はふと目が覚めた。

壁に向かい横向いていた一護は、ぼんやりとした頭で首を捻り見上げた天井は真っ暗で、まだ夜明け前であることがわかる。

「・・・・・今、何時だ?」

基本朝まで起きぬ方なので、なぜ自分が起きてしまったのか疑問に思い、枕元の時計に目を向けようとした。

その時、だった。


「・・・・・・なんだ?」


部屋側に向けていた背中に気配を感じ、一護は何気なく振り返る。
そして振り返った途端、あまりの衝撃に一護は硬直し、心臓までも止まりそうになる。

 

それも当然。

一護の背後に寄り添うように、なぜかルキアが健やかな寝息をたて眠っているのだから。

「!?ルキッ・・・・・!」

あまりの驚きに一護は大声で叫びそうになり、慌てて両手で口を塞ぐ。
口が閉じられると、自分の心臓の鼓動がドッドッドッと激しく高鳴り、体の中いっぱいに反響しているのを強く感じられた。

 

なんでルキアが俺の布団にっ!?

 

冷静に考えればトイレにでも起きたルキアが寝惚けた状態で、単に戻る部屋を間違えたのだと瞬時に判断できそうなものだが、
恋に迷った少年は冷静な対処が出来ず、色んな思いがないまぜになり、眠り続けるルキアをじっと見つめていた。

だがいつまでたっても目覚めそうにないルキアの様子に、一護の気持ちも少しだけ冷静さを取り戻し、
薄闇を透かし見える寝顔に見惚れ、小さくルキアの名を呼んだ。

 

「・・・・・ルキア?」

 

しかしルキアはこれにも全く反応を示さず、相変わらず、すうすうと寝息をあげ眠り続ける。

「んっとに、てめーは呑気なツラして寝てやがんな。・・・人の気も、知らねーで。」

その寝顔があまりにも安らかに無防備で、一護は薄く笑みを浮かべると独り言のように語りかけた。

 

「なぁ、ルキア。

お前にとって、俺は・・・なんだ?

ただの仲間・・・・・でしかないのか?」

 

切ない胸の内を初めて口にした一護であったが、眠るルキアは答えてはくれない。

一護は口元に浮かぶ自嘲の笑みを更に深め、胸疼くルキアへの恋心をよりハッキリと自覚していた。

 

こっちばかり好きで、相手の全てを意識して、反応して、恋をするなんて本当にバカみたいだ。

一緒にいて嬉しい事はごく僅かで、あとは苦しくて、切なくて、割に合わないとさえ思えるのに、
だからといって、この気持ちを止められないとは不当とさえ思えるのに。

 

それでも、人は恋をする。

 

自分にとって唯一無二の存在と出会い、

同じ未来を共有したくて。

 

そんな絶対の存在が、俺にはルキアなんだ。

これからもずっと。

ずっとずっと、ルキアと一緒にいたいから。

 

ギシッ・・・

 

いつの間にかルキアの上に覆い被さるように接近した一護が、更に距離を縮める為、
ルキアの顔の真横に手をつき体重をかけると、小さく呻くようにベットが軋む。

 

焦がすような視線で一護は熱くルキアを見つめ、自然とルキアの唇を目指し、一護の顔がゆっくりと下降していく。

 

「好きだ・・・ルキア・・・・・」

 

一護は溢れる胸の内を掠れた声で小さく囁くと、堪えきれず急速にルキアを求め近づいた。

二人の吐息が交じり合う程に唇が近づき、あとほんの僅か。

一護が顔を突き出せばもう触れ合える。

その寸前。

 

 

「なにをするか一護っ!」

 

「っ!?」

 

 

もうほんの一押しの瞬間に、突如ルキアに怒鳴りつけられ、一護はひどく驚き、弾けるようにルキアの上から飛びのいた。


「ちっ!違っ!違うんだルキア!

これはその・・・ちょ、ちょっと魔がさしたっていうか・・・だから、違っ・・・!」

今までの人生でこれほど狼狽した事がない勢いで慌てふためく一護に対し、怒鳴りつけてきたはずのルキアは横になったまま動かずにいる。


「だから俺は・・・あれ?ルキア?
お前、聞いてんのか?」

今の行為を当然咎められると思っていたのに、それどころかいつまでたっても起き上がりもしないルキアを不審に思い、
恐る恐るにじり寄った一護は、そーっとルキアの顔を覗き込めば、ルキアは小さな声で呟いた。


「その白玉は、私のだと言ったであろう・・・」

「白玉?白玉って、お前何言って・・・なんだよ。まさか、今のはただの寝言か・・・」


寝言に奇跡のタイミングで怒鳴られただけで、ルキアは眠り、今のは気付かれていないらしい。

とにかく助かったと一護は胸を撫で下ろし、腹の底からほーっと安堵の息をつくが、一護はすぐにハッとして我に返った。

 

『俺は・・・俺は、今ルキアに何をしようとした!?』

 

かろうじて未遂に終わったが、いくら想いが募ったからとはいえ、寝込みを襲うなど男として人として最低の行為ではないか。

「俺ってサイテー・・だな・・・・・」

激しい自己嫌悪に打ちのめされた一護は、ルキアを起こさぬようにベットから降り立つと、押入れから毛布を掴みそっと部屋から出て行った。

 

 

 

あの後一護は、リビングのソファで眠れずに朝を向えた。
妹が準備してくれた朝食をとり、起きて来たルキアと入れ替わるようにして部屋へと戻り、手早く身支度を整えると、
何か呼びかけてくるルキアの声を無視し、逃げ出すように一人家を出た。

 

冬の朝。
凛と冷たい清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んでみるが、一護の胸に溜まったモヤは晴れることなく、
昨夜の自分の行動を思い返しては果てしなく気分は落ち込んでいくだけだった。

 

『なにしてんだろーな、俺。
これからどんな顔して、ルキアと接したらいいんだよ・・・』

 

例えルキアに切ない思いを抱いていても、本人の知らぬ間を狙い、寝込みを襲うなど許されることではない。
これからしばらく昨夜の己の行為を思い返し、激しい後悔と決して口には出来ぬ気恥ずかしさに、とてもまともにルキアと顔をあわせることは出来そうもない。
そんな暗い今後を憂い、一護の気分も足取りも自然と重くなっていく。
幾度となく溜息をつき、時々足まで止めながら、引きずるような歩みでバス停へ向っていると、後方から軽快な足音が近づいてきたではないか。

「待て一護っ!」

「っ!」

 

嫌な予感に一護が振り向くまでもなく、どんな顔をして会うべきか悩んだ相手が自分目指し、一直線に駆けてくるではないか。
一護はどうすれば良いのかわからず、軽い混乱状態でルキアの方は見れず、無言のまま僅かに歩みを早くする。
そこに追いついてきたルキアは一護の隣に寄り添うと、なんだか様子のおかしい一護の顔を訝しげ覗き込む。。

「どうかしたのか一護。何故返事をせぬのだ。
昨夜私が寝惚け、貴様の布団に潜り込み占領したことを怒っているのか?」

「・・・・・」

もちろん一護は怒っていたわけではないが、だからといって昨夜の事をルキアに話せはしない。
挙句良い言い訳も思いつかぬものだから、一護はむっつりと黙り込むしかできぬのだが、これにルキアは大袈裟に肩をすくめる。

「なんだ。やはりまだ怒っているようだな。まったく。昨夜も言ったではないか。男が小さいことを気にしては大成せんと。
・・・とはいえ、私が寝惚け布団を占領しお前に迷惑をかけたのだし、ここは素直に私が謝罪しよう。すまなかったな。」

ルキアは足を止め一護の方へと向き直ると、潔く頭を下げた。
けれども一護はそんなルキアを尻目に、足も止めずに素通りしていく。
いつもの茶化しではなくちゃんと謝罪したというのに、まさか声もかけられず置いてけぼりをくらうとは思ってもいなかったルキアは驚き、
無言で去っていく一護へ慌てて追いすがり、腕を掴み止めようとした。

「こら待て一護!私の謝罪を無視するなど・・・」

バッ!

ルキアに腕を掴まれた瞬間、どうしようもない気持ちと後ろめたい気持ちが相まって、
反射的にその腕を振り上げ、ひどく乱雑に払いのけて怒鳴る。

 

「さっきからうっせーな!俺に構うんじゃねー!」

「なっ!わ、私は自分の非礼を認め、謝罪したのではないか!何故貴様は怒っているのだ!?」

「黙れ!謝りゃ全部許されるわけじゃねーだろ!」

「なにをムキになっておる!何故貴様は・・・」

 

不可解な態度に詰問をやめず、こちらを一瞥もしない一護を振り向かせようと、
ルキアは再び一護の腕を掴み取ろうと手を伸ばした。しかし。

 

「黙れって言ってんのがわかんねーのか!
俺はお前のその無神経なところが嫌なんだよ!!」

 

「・・・っ!」

今度はルキアに掴まれぬように腕を避け、やっと真正面からルキアと見合ったかと思った瞬間、一護は大声でルキアを怒鳴りつけていた。
妙に迫力のある一護の勢いにのまれ、今度こそルキアは口にすべき言葉を失い足を止めた。
だが怒鳴りつけた一護自身、この売り文句に動揺しつつも、うまいフォローも思いつかず、内心途方に暮れながら歩き続けていた。

 

なんだよこれ。俺、格好悪すぎるだろう。

ルキアは悪くないのに怒鳴りつけたりして。

こんなの意味不明な八つ当たりじゃねーか。

 

後ろめたさを誤魔化す為に、大声を張り上げてしまった情けない自分に失望してはいたが、
いつもなら売り文句に即買い文句を叫ぶルキアがいつまでたっても無言である事が気にかかり、一護は恐る恐る窺うように振り向いた。

「・・・・・ルキア?」

だが振り返った視線の先には誰もおらず、一護は慌ててルキアの姿を求め周囲を見回し名を叫ぶ。

「ルキアッ!?」

しかしこれに応えてくれる者はおらず、一護は急いで踵を返すと、ルキアを追う為駆け出していた。

 

 

 

予想外の一護の剣幕に、思わずルキアはその場から逃げ出した。
最近、自分に対する一護の様子がどうにもおかしいと感じてはいたが、普通に会話も出来ぬほどに、
ここまで嫌われていたなんてさすがに思わなかった。
思いたくなかった。

駆け出しながら、胸込み上げる悲しみに熱く瞳を潤ませ、強く唇を噛み締める。
ここまで疎まれていたとあっては、もう一護の元には戻れない。
ルキアの心はそんな絶望的な喪失感に満たされ、まるで闇の中を疾走しているように、あてどもなくただ遠く目指して走り続けた。

 

それなのに。

 

「・・・おいっ!待てよルキアッ!」

「い、一護っ!?」

 

もう会えないと今心決めたばかりなのに、突如背後に一護が現れ、猛ダッシュでこちらに近づいてくる。
驚く間もなく二人の距離はどんどん縮められていき、混乱と焦りにルキアは必死で叫び逃げまどう。

 

「一護!貴様なぜ追ってくるのだ!止まれっ!」

「てめーが逃げてるからだろうっ!

そっちこそ止まりやがれ!」

「貴様が私に構うなと言ったのではないか!だったら私の事も構うでない!」

「そ、それは・・・!わかった!ちゃんと話すから、とにかく止まれ!
このままじゃまともに話なんができねーだろ!」

「だったら貴様が先に止まれ!」

「なんで俺の方なんだよ!先に走ってんだからてめーが先だろ!!」

「嫌だ!一護が先だ!」

「お前が先だ!なんで止まんねーんだよ!」

「それは貴様が追ってくるから!」

「止まれ!」

「嫌だ!」

「そーかよ・・・だったら、だったら、無理にでも止めてやらー!!」

 

通学路から外れた人気ない静かな川原の道を、激しい口論を交わしながらも足は止まらず走り続ける二人。
手を伸ばせばルキアに触れられるくらい近づきながら、この距離がなかなか埋まらず、焦れた一護はルキアに向い猛突進しタックルを決めた。

 

「うひゃぁっ!?」

 

突然の衝撃にルキアは避けきれず捕まると、くしくも土手上だった二人はなだらかな傾斜の草地の上を、
一護はしっかりとルキアを抱き庇いながら、絡まりごろごろと転がり落ちていく。

やがて勾配の下まで転がりつくとゆっくりと起き上がり、二人とも草まみれになった体を払い、草地の上に座り直した。

 

「はっ・・はっ・・・お前、結構早えーな。」

「はぁっ・・はっ・・・と、当然・・・だ。
死神化しておったら・・・はぁ・・・貴様になど・・はっ・・・絶対に捕まらぬ自信は・・・ある。」

「俺より息上げて言ってんじゃねーよ。
お前、なんで逃げ出したりしたんだ。」

「・・・・・」

 

一護の問いには答えず、まだ息を乱しルキアはふっと顔を背けて視線を落とす。
そんなルキアの様子に一護も気まずそうに軽く頭を掻くと、それから思い切りよくルキアに向い頭を下げた。

 

「いや。それは俺のせい・・・だな。悪かったよ。苛々して八つ当たりしちまって。ごめん。ルキア。」

「八つ当たり?それは、なんのことだ。」

「それはその・・・色々あって、とにかく疲れてたんだ。
俺が毎日大変な思いしてんのに、いつもお前は呑気に過ごしてるだろ。それに腹が立ってよ。」

「な、なんだそれは!私のどこが呑気なのだ!」

「だから悪かったって!それも当てこすりだ・・」

「なにが呑気なものか!私は・・・私だって毎日大変なのに!貴様の方が呑気ではないか!!」

 

うまく説明ができないながら必死で弁明をしてみるが、自分の気持ちを何も知らぬルキアに呑気と言われ、
これには一護もカチンときて、またも詰問するようなやや鋭い口調でルキアへ詰め寄る。

 

「毎日大変?お前のどこが毎日大変なんだよ?」

「な、なんだと・・・!?」

「死神の仕事どころか、お前すっかりこっちの生活満喫しやがって、毎日毎日随分楽しそうにしてんじゃねーか。
俺には呑気そのものにしか見えねーぞ。」

「それはお前が知らぬだけで・・・」

「俺が知らねーって、何がだよ?」

「それは、その・・・な、内緒だっ!」

「なんだよ?俺が知らない事なんだろ?
俺が知らないから呑気だと思ってんだぞ。言ってみろって。」

「い・・い・・・嫌だ!」

「なんだそれ。気になるだろ。言ってみろって。」

「・・・・・だから!気になるのだ!!」

「気になる?なにが?気にしてるのは俺だろ?」

「・・・・・だ。」

「あ?なんだ?聞こえねーよ。もっと大きい声ではっきり言えって。」

「〜〜〜〜!」

 

ひどく言いにくそうに俯き呟くルキアに、一護はわざと手を耳元に添え声が聞こえない事をアピールする。
そんな一護の無粋な様に今度はルキアが苛立ち、キッと顔をあげると真っ向から挑むように一護を睨みつけ叫んだ。

 

「貴様がだっ!」

 

「・・・・・・・・・・はっ?」

 

意外な解答に一護は心底驚き目が丸くなる。
だがルキアの方は、一度堰を切ってしまえばあとは留めることが出来ず、一護に向い半ばヤケにまくし立てた。

 

「毎日何をしていても、とにかく貴様の事が気になって仕方がない!
これとゆうのも一護!全て貴様のせいなのだ!なんでもいいから責任をとれ!!」

「責任・・・って言われても、俺にどうしろって。お前の言ってること無茶苦茶じゃねーか。」

「煩い!無茶なのは承知の上だ!
とにかく私は貴様の動向ばかり気にしていたのに、そんな私に対する貴様の態度はなんだ!
私をまともに見ようともせず、話もしようとしない!貴様に疎まれていると思ったら胸が張り裂けそうに苦しくて悲しくて!

それなのに毎日毎日貴様の前では、無理をして平静を装い笑ってみせていたとゆうのに!
そんな私のどこが呑気だ!全部貴様が悪いのではないかっ!」

「・・・・・」

 

なんだか全く要領は得ぬが、なんとかルキアの言い分を解読してみると、どうやらルキアも自分と全く同じ思いを抱きながら、
ややこしいことにその思いがなんであるか本人は自覚していないようである。
つまり二人はとっくに両想いになっていたのにそれには気付かず、互いを意識し合いながら無用に遠ざけようとしていたとゆうわけだ。

この考えに至った一護は、今までの己の道化ぶりに呆れ膝から力が抜け落ちそうになった。
しかしルキアの気持ちをちゃんと確認しておこうと、決死の覚悟で久しぶりにルキアと真正面から向き合った。

 

「なぁ。お前の言う気になるって・・・つまり・・・・・あれか?」

「・・・あれ?とは、なんだ?」

「その、お、俺の事、意識してる。ってことだよな?」

「それはそうであろう。最近ではいつも気付くとお前の事を考え、姿を探してしまうのだから。」

「!おまっ・・・それって、もう告白だよな?
俺にお前が告白したって思ってもいいんだろう?」

「何を言っている一護?私は先ほどから、貴様を意識していると告白しているではないか。」

「意識してるって、それだけじゃねぇだろ!?
なんだよそれ!?お前、どこまで鈍いんだ!?」

「に鈍いだとっ!?私のどこが鈍いというのだ!」

「鈍いじゃねーか!とっくに俺のこと好きなくせに、その気持ち口に出して言っといてまだ気付いてねーとか!
ありえねーくらい鈍いだろ!?」

「わ、私が貴様を好きにだとっ!?
思い上がりも大概にしろ!死神が人間相手に好意を寄せるなど許されるわけが・・・!」

「んなもん関係ねーんだよっ!
俺だって毎日お前のこと意識してんだ!
だから、お前だって俺のこと好きになって意識してりゃ丁度いいんだよ!このバカ野郎!!」

「なっ!?」

「だからお前は俺を好きなんだって、自分でちゃんとわかっとけ!でないと話が進まねーだろ!?」

「そんな事を言って私ばかり責めるでない!・・だ、大体、そーゆー貴様はどうなのだ?
本当に私を好いているのか?そう思い込んでしまっただけで、実は貴様の勘違いではないのか?」

「はぁっ?勘違いだと!?」

どうにも素直になれぬルキアは、往生際悪く突っ張り、偉そうに腕を組みそっぽを向いてフンッと強く鼻を鳴らす。
このルキアの態度に苛ついた一護は、思わず声を荒げて叫んだ。

 

「ふざけんなよてめー!なにが勘違いだ!
勘違いで毎日こんなに苦しい思いをしたり、お前が入った後の風呂に入れなくなったりするかっ!!」

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

「え?あ?・・あ・・・・・あああああああっ!」

 

一瞬の硬直後、自分がなにを口走ったか自覚した途端、一護の口から絶叫が迸る。
あまりの動揺に立ち上がるとせわしなく周囲を歩き回りながら、寒い中一人顔を真っ赤にして動揺に汗を噴出させる。

 

「ちくしょうーサイアクだ・・・なんなんだよ一体。
なんで俺、こんな事言って・・・おめーのせいだぞ!」

「な、な、何を言うか!なぜ私のせいなのだ!勝手に暴走したのは貴様であろう!」

 

そんなルキアの声も一護の耳にはもはや届かず、あまりの羞恥に今度こそ完全に膝から力が抜け、一護はその場にへなへなとしゃがみこんでしまう。

 

「あー・・・なんだよこれ。最悪より最悪じゃねーか。ありえねーくらい、俺すげー格好悪りぃ・・・・・」

「一護・・・」

 

両手で後頭部を押さえ完全に俯いてしまった一護は、どうしようもなく気落ちしている。
心配したルキアはおずおずと一護の傍らに寄り添い、俯いている一護を覗き込むように見つめ、優しく囁きかけた。

 

「なぁ、一護。お前は格好悪いと言っていたが、そうでもないぞ。嘘
のないお前の気持ちが知れて、私は、だから・・・その・・う、嬉しかったのだから。」

「・・・・・」

 

恋愛感情からとはいえ、かなりギリギリアウトをとられそうな思いを、ルキアに嬉しいと言ってもらえほんの少しだが一護の心は軽くなれた。

かなり間抜けな告白ではあったが、ここは決めるべき場面だと胸の内だけで己を鼓舞し、一護は大きく息を吸い込むと決然として顔を上げる。

 

「ルキア!おれ・・・っ!?」

 

だが、その次に続く一護の言葉は遮られた。

不意打ちに重ね塞がれた、ルキアの唇によって。

 

ほんの一瞬ではあったが叫び途中の一護の唇に、柔らかなルキアの唇が、確かにふわりと舞い降りた。

 

「・・・莫迦のようにあまり大きく口を開けるな。

歯が少しあたったではないか。」

 

突然の幸運に一護の頭はフリーズし、数秒間状況が判断出来ず固まった。しかし目の前のルキアは、頬染め気恥ずかしげに目を逸らしており、
その様子に一護は急激に理解し我を取り戻すと、今度は固まった頭の中が急激にカーっと熱く沸騰していった。

 

「おまっ・・・いきなり、なにっ・・・・・!」

「貴様がいつまでも腑抜けているから喝をいれてやったのだ。ありがたく思え!この大たわけめ!」

「〜〜〜〜〜っ!」

 

真っ赤な顔で涙ぐみ腰を抜かさんばかりに動揺しきった一護を眺め、ルキアは幾分無理をして強きに嘲笑い、悪戯っぽく大きな瞳をくりくりさせた。

 

なんだよこれ!なんなんだよこの展開!!

 

恋を自覚した途端、毎日片恋の辛さに苦しんでいたのに、気がついたら実は両思いで、しかも相手からキスまでしてもらえたなんて。
とても嬉しいはずなのに、それ以上に悔しいような、どうにも複雑な気持ちいっぱいで一護はルキアをぽかんと見つめた。

「どうした一護。この程度のことで腰が抜け、口も利けなくなってしまったか?」

「てっめ・・・!あんま調子のってんじゃねーぞ!」

「ひゃっ!?」

急激に発展した展開についていけず、しかしルキアに主導権を握られていることが男として情けなくて。
一護は悔し紛れにルキアの手を掴むと、力一杯自分の方へと引き寄せ、その小柄な体を腕の中へとすっぽりと閉じ込めた。
あまり人気がないとはいえ誰が通るかわからないのに、朝っぱらから家の近所の屋外で抱擁するなど、
一護らしくない積極さに焦り、なんとか逃れようとルキアはもがき訴える。

「い、い、一護!貴様なにをしているか!

こ、こ、こんな所でこんなことをしていては、誰に見られるかわからんではないか!早く離せ!」

「うるせー!てめーの方が先にやったんだからこれでアイコだ!次は俺の番だから少しは大人しくしてろ!」

「だ、だから、こんな所では誰が・・・・・」

「いいから!少しだけ・・

少しだけ、黙っててくれ。俺に時間をくれよ・・・」

「いち・・・・」

一護は腕の中でバタついていたルキアを押さえ込むと、艶やかな黒髪に唇を押し付け、そっと囁く。

 

「好きだ。ルキア。」

「・・・!」

 

初めて聞く一護の甘く切ない声と、髪に押し当てられた熱い唇の感触に驚き、今度はルキアが鼓動も早くフリーズした。
だが一護の方は、すぐ目の前にいながらも勇気がなく、手を伸ばせずにいた相手を、やっとこの腕に抱けた深い充足感に静かに満たされていた。

 

「本当は俺、ずっと前からお前に気持ちを伝えたいって思ってた。
・・・でも、お前の気持ちがわかんなくて、言って前みたいな関係に戻れないのも嫌だったし、だからお前に対してあんな態度しかとれなくなってた。
どんな形でもお前を失うのが恐くて・・・根性なしで、御免な。」

「そんなことはないぞ!
それは、私も同じ気持ちだったからよくわかる。私も、お前を失うのが恐かったのだ。」

「・・・ルキア。」

 

不甲斐ない自分を責めうなだれる一護に、ルキアはつと顔を上げ真っ直ぐに一護を見つめた。
当然一護もルキアを見つめたその視線が交じり合うと、どちらともなく顔を寄せ、互いの温もりを求め自然と唇を重ね合わせ・・・ようとした。

 

「ワンッ!」

 

「「!」」

 

そんな二人だけの世界から突如現実に引き戻したのは、小さく真っ白な一匹の子犬であった。
二人の間を裂くように小さな体を割り込ませ、千切れんばかりに尻尾を振り愛くるしい黒目を輝かせている。

 

「だめよーちぃちゃん。お兄ちゃん達は忙しいんですからねぇ。早くこっちにいらっしゃいー」

 

挙句飛んできた飼い主の声が追い討ちになり、二人は急ぎ立ち上がると制服の草を払い、強張った顔に愛想笑いを浮かべ、慌ててその場から駆け出した。

走りながら一護は悔しそうに気持ちを溢す。

 

「なんだよ・・・最後まで、決まんねぇなぁ。」

「そうしょげるな。ここは人目がある上家の近所であるし、これでいいのだ。これも、私達らしいとゆうものではないか。」

「そりゃあ、まぁ。そうだけどよ・・・」

あまりのタイミングの悪さに納得できず、ぶつくさとぼやく一護の仏頂面を見てルキアは笑う。

「それより一護!時間を見よ!次のバスを逃しては完全に遅刻となるぞ!早く走れ!」

「あぁ?もう学校なんていいじゃねぇか。」

「何を言う!私がついていて貴様がサボったとあっては、ご家族に示しがつかぬ!早くしろ!」

「・・・ったく。さっきまであんな事言ってたくせに、てめーは切り替え早過ぎんだろ。」

 

数刻前の甘さなど微塵も残らぬ、その笑顔のやけに晴れ晴れとした様子に、仕方なく一護も僅かに笑みを浮かべた。

 

しかたねぇな。とにかく互いの気持ちを確認できたのだから、今は別に焦らなくてもいいか。

 

これからは好きな時にルキアに向って、手を伸ばしても許されるはずだから。

 

片恋の苦しさから解放された一護の心は浮き立ち、少し前を走るルキアの背を眺めながら、
これからはどうやって家族の目を盗み、二人だけの時間を作ろうかと早々と思案し始める。
もちろんルキアが傍にいてくれるだけでも嬉しいけれど、それだけで済むはずもないのが健全な思春期男子の本音であろう。

 

両思いになった相手との同居生活。

それは思い悩むような切なさを乗り越え、これから手に入れるはずのルキアと分かつ甘い未来。

 

 

蠱惑的に赤く、咽るまでに甘い。

 

君と過ごせる、薔薇色の日々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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この作品は合同誌第一弾に書いたものです。今回載せるにあたり、読み返してたらこんなもん書いていたのかと恥ずかしさに砂吐きそうになった〜@_@;
当時は頻繁にチャットしたりしていて、その中でも特に良くお付き合いして下さったお仲間様と「鰤のオンリーあるし皆で本出す?」って勢いとノリだけですべてが決まったものでした… 
合同誌も本を出すのも初めての経験で色々大変だったけど、素晴らしき仲間と本が出せる喜びにかなり張り切ってましたね。
目の前で本が売れていく嬉しさ。私の作品をいつも読んで下さる方と顔を合わせられる奇跡。挙句、たくさんの差し入れまで頂けた驚きと幸せ。
昔の事ですが今でも関わってくれた全ての人にありがとうを言いたい。いや言おう。皆さまお世話になりまして本当にありがとうございました。
その時頂いた小さな可愛いウサギのお守りは、今でも私の財布の中に住んでおりますよー^^V☆
私の中で最高潮であった当時のようではないでしょうが、また新しい思い出を作りに次の春コミ参戦できたらなーと密かに野望を燃やし中。
でもとにかく原稿仕上げないといけないので、仕事もオタクも子育ても、ちょっと無理してでも今だけ頑張ろう自分!


というわけで、無事新刊発行の折にはイチルキファンの皆様、どうぞよろしくお願いいたします〜><

2014.3.10 (2011.2.13寄稿)

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