『 真紅の絆 』 第三話


自室で勉強をしていた一護は突然背筋にぞわりとした悪寒を感じ、思わず手にしたペンを取り落とした。

「なんだ?今の・・・・・・・・・・・」

突如わけのわからぬ不安が自分の中に膨れ上がるが、その理由に見当もつかぬまま、一護はなんとなく後ろを振り向いた。
自分以外に誰もいない、静かな室内。
あいつがいないと、こんなにも静かなんだな。
なぜかそんな事を今更ながらにしみじみと思い噛み締め、一護はぐるりと首を回す。

「風邪でもひいたか?なんかダリぃし・・・・・今日は、もう寝るか。」

ルキアがいないと多くなる独り言を呟き、部屋の電気を消し大人しくベットの中へと潜り込むと、
それほど眠かったわけでもなかったはずなのに、一護は沈み込むように眠りの中へと落ち込んでいく。
しかしその眠りは穏やかなものではなく、寝入った一護の口から苦しげな呻き声があがるまでさほど時間はかからなかった。


「・・・・・・・・ルキアっ!」


眠っていたはずの一護は、嫌な汗をかきベットから飛び起きた。
まだ暗い闇に沈んだ室内は静まり返り、それだけに自分の心臓の鼓動がうるさいまでに鳴り響く。

夢に、ルキアが出て来た。

しかしルキアはやけに悲しそうな顔で、黙ってこちらを見ているのだ。
そして声を出さずに、ゆっくりと小さく唇だけが動きだす。
一護はその動きを読み取り、驚愕した。
ルキアの唇は、はっきりとこう紡いだのだから。

 

『   タ  ス  ケ  テ   』

 

これに一護は慌ててルキアに呼びかけようとしたが、ルキアはすげなく背を向け、
目を射るような白く強い光の中へと飲み込まれ消えて行った。

ここで、一護は目が覚めた。

ルキアが尺魂界へ戻ったのは、昨日の午後の事。
詳しい話を聞かなかったのが強く悔やまれる。
昨日ルキアが座っていた自分の机を眺め、自分の呼びかけに振り向き笑うルキアを思い出す。
たかが夢でありながらも説明のつかないひどい胸騒ぎを感じた一護は、急ぎベットから飛び起きると真っ直ぐに浦原商店へと駆け込んだ。

「浦原さん!開けてくれ!俺を、俺を早く尺魂界へ行かせてくれ!!」

一護が大声で怒鳴り浦原商店のシャッターを叩けば、最初に出て来たのは浦原ではなく見事な体躯の大男、テッサイであった。

「・・・・・・・このような時間に、何事ですかな。」

「テッサイさん!緊急事態なんだ!!浦原さんはいるか?
ルキアが俺を呼んでる!俺を、尺魂界へ行かせて欲しいんだ!!!」

「・・・・・・どうしたんです?何か、あったんすか?」

店先でテッサイと揉みあう内に、奥から眠そうな声と共に姿を現した浦原に向かい、一護は即座に駆け寄り叫ぶ。

「すまない浦原さん。俺自身よくわかんねぇけど、でも、急いで尺魂界へ行かなきゃならないんだ。
ルキアが・・・ルキアに、何かあったかもしれない!」

この一護の言葉に浦原は眠たげな目をキョンと見開き、同じようにこちらを窺うテッサイと一瞬見合い、
それから一護へと視線を戻すと、少しだけ申し訳なさそうに口を開く。

「あのうすみませんが、貴方の仰っている・・・その“ルキア”って、誰の事なんですかね?」

「っ!」

この浦原の一言に一護は絶句し、理由のない胸騒ぎは絶対の確信に変わった。

 

 

 

ルキアの記憶を失った浦原への説明もそこそこに尺魂界への扉を抜けた一護は、以前見た光景とは全く違う、尺魂界のあまりの変わりように言葉を失う。
瀞霊廷は大規模な範囲の街並みに大量のコンクリートを投げつけ固められたような惨状で、そこかしこで起きた火災の煙がゆらゆらとあがっている。
昨日の時点でこのような事が起こっていたなら、きっとルキアから話を聞いていたはずだ。
しかしルキアは、久しぶりの里帰りにウキウキと楽しげにはしゃいでいた。
それに尺魂界の動きを把握している浦原も詳しい事情を知らなかったとなれば、これは自分がこちらに来る寸前の出来事なのだろう。
とにかく今は生存を確認しようとルキアの行方を探るべく、まずは知り合いの死神を探し、一護は瓦礫と化した街並みに足を踏み入れ力一杯走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※うちの一護は、映画と違って一瞬でもルキアを忘れたりしません。なぜかと言えば、私のイチルキフィルターで本編よりルキアラブ増しだからw
この作品のポイントとして、映画を鑑賞した方は映像としてイメージがしやすいよう、中身の内容は違っても、なにかと映画シーンを絡めたような場面を取り入れるように心がけています。ここがまた『似て非なるもの』ポイント☆(言い切った!)
あと、戦闘表現は苦手だし、丁寧に描写すると無駄に長くなるので、そこは巻きと皆さんの想像力で逃げ切るつもりですのでご協力お願いしますw
話の運びも出来るだけ映画の流れを参照。ちなみに次は、連れ去られたルキアターン。うちのルキアと、あの二人との過去が明らかに・・・!?
2009.10.5

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