『 真紅の絆 』 第二話


ドッオォォ・・・・・・・ン!

そう遠くない所から突如爆音が轟き、膨大な霊圧を感知したルキアは驚き振り向いた。

しかし境内は木々がうっそうと生い茂り、ここからでは街の様子が一切見えず、ルキアは手にした書簡を胸元に押し込むと、
急いで先程あがってきたばかりの石段を駆け下り、そこから瀞霊廷を見渡しあまりの光景に愕然とした。

ルキアの視線の先に広がる街並みは、神社に向かうほんの少し前に見ていた風景を一変させており、
高圧の霊子が大きな蛇のように唸り全てを飲み込みこうもうと、建物を破壊し激しくのたうちまわっている。

「これは一体・・・・・どうしたことだ!?」

この状況に理解出来ないまま、とにかく緊急事態なことには変わりなく、
ルキアは破壊に暴れまわる霊子蛇を止めようと、街へ向かい急ぎ走り出そうとした。

その瞬間だった。



「行っちゃだめ!!」


後方から聴きなれぬ女の声が飛び、ルキアが弾けるように振り向くと、そこには見慣れぬ若い男女が立っている。


一人は背が高い男であり、その手には見慣れぬ大きな鎌のような武器が握られていた。
もう一人は明るく輝くような短い金髪を闇夜に揺らし、大きな目をした勝気そうな顔立ちの女である。
姿から察するに流魂界の住人のようで、あまり身なりの良くない白い着物に身を包み、
不思議なことに二人は親しげな笑顔を浮かべルキアを見つめていた。

「・・・・・誰だっ!貴様ら!!」

このような状況下に突然現われた旅禍の存在にルキアは警戒心を露わにし、
腰の袖白雪の柄に手にかけ、いつでも抜き取れる臨戦状態で睨みつける。

そのルキアの様子に男は淋しげに俯き、女は仕様がないと言わんばかりに肩をすくめ大袈裟な溜息をつく。

「姉さん・・・・・」

「やっぱり覚えてないんだ。あたし達のこと。
・・・・・・まぁ当然なんだけどね。記憶を奪ったの、あたしなんだし。」

「・・・・・そうだね。覚えてなくても、仕方がないね。」

「でもやっぱり寂しいもんね。久々の再会なのに、こんな風に警戒されちゃうなんて・・・」

「そうだね、姉さん。僕も・・・寂しいよ・・・・・・」



「なんだ貴様ら!一体、何の話をしている?!」


二人の会話に割り入ると、ルキアは刀を抜くタイミングを計りジリジリと間合いを広げた。
そんなルキアにお構いなしに姉弟は一瞬視線を合わせ、そのアイコンタクトを合図に計画通り行動に移る。
まずは男の方がルキアに向かって優しげに微笑み、ゆっくりとした動きで足を進みだす。
これにルキアは厳しく声をあげた。


「止まれ!」

しかしこの警告に男の歩みは止まらず、広い歩幅はたちまち二人の距離を縮めていく。
ルキアは剣先を男に向けると、先程よりも強い調子で声を張り上げた。

「止まれ!貴様!止まらぬなら、問答無用で切り捨てるぞ!!」

ここでやっと足を止めた男は、優しげに微笑みかけると、ゆっくりとした動作で片手をルキアに向かって差し出し言った。

「会いたかったよ・・・ルキア。君を、迎えにに来たんだ。」

「私を?なぜだ?なぜ、私を迎えになど・・・!」

「約束したんだ。大きくなったら、迎えに来るって・・・・・・」

「約束?わたしが、お前と・・・・・・?」

意味がわからず、ルキアがぼんやりと言葉を返した時だった。



「あなたの存在を・・・・・消す。」


男との会話に気をとられ、突然間近に聞こえた声にルキアはハッとし慌てて刀を構え直そうとしたが、
時すでに遅く、目の前に迫り来る女の大きな瞳としっかりと見合った。

女は素早く片手をルキアに向かって伸ばし構えると、その手のひらに強い力が渦巻いていくのを真正面から目にした瞬間、
突然体の力と同時にルキアの中から何かが抜きとられ、その場にがくんと膝をつき、
完全に放心したように瞳を曇らせ、ルキアの意識はどこかへと飛び去ってしまった。

このルキアの様子に女は満足を、男は心配そうに言葉を交わす。

「だめだよ姉さん。そんな乱暴にしたら、ルキアが怪我をするじゃないか。」

「だって仕方ないじゃない。死神になんてなるもんだから、この子も強くなっちゃったしね。
でもまさか、ルキアが死神になっちゃうなんて思わなかった。
やっぱり死神なんて、ロクなもんじゃないわね!」

「そうだね、姉さん。僕も、そう思うよ。」

男からのたしなめに女はむくれたように頬を膨らませ、そんな女の様子に男は苦笑し小さく頷いた。
すると女の表情は一変し、ひどく嬉しげに微笑み、座り込んだルキアの顔を覗き込む。

「でも、もう大丈夫!こうしてしまえば、もうこの子はあたし達だけのもの!
ルキアを覚えている奴は、あたし達以外に、もういない。」

男は手にした大鎌を背負うと、代わりにルキアを丁寧に抱き上げた。
女は眠るルキアの頭を優しく撫でると、愛おしげに見つめ囁く。




「ずっとずっとずっと、本当にずーっと会いたかったよ。



そして、さよなら。




・・・・・“ルキア”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※この話の大筋は、内容を知らない時に見た映画CMで妄想したもので、当然ですが本編とは似て非なる完全パラレルですので改めてご了承ください。
一話一話の内容は少なめで、まるで回数かせぎしているような連載になってしまいそうですが、
その意図としては場面転換を狙ってのことですので、その点も何卒平にご容赦頂きたいのです。(平伏)
実はまだ途中展開がまたも未定で、連載するのに少々の不安はあるものの、
イチルキ映画DVD発売を祝し、私の妄想映画パラレルを皆様に少しでも楽しんでいけたら良いなと願っています。
2009.10.1

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