『 茜さス 帰路 照らサれド・・・ 』
燃えるような夕焼けが空を焦がす。
今日が終わる。
夜が来る。
それは今日の短い逢瀬の終わりの合図。
ギンは溜息を押し殺し、小さな声で呟いた。
「・・・綺麗な夕焼けやね。」
「・・・そうだな。」
「・・・こないに真っ赤で・・・燃えてるみたいや。」
「・・・そうだな。」
「・・・もう、帰らなあかんね。」
「・・・」
しかしルキアは最後の言葉に相槌を打たなかった。
ただ黙って空を見上げ、心細げに膝を抱き締め小さな身体を更に縮める。
ギンはそんなルキアの様子を横目で眺め、小さく小さく溜息をこぼす。
ルキアには、たまにこんな時がある。
それは、失った最愛の男を思い出している時だ。
初めは自分と別れるのをツラく思ってくれているのかと、
嬉しく思ったものだったが、回を重ねるにつれギンはわかった。
ルキアは、海燕を思い出している。
その事実は強烈にギンを嫉妬に狂わせるが、亡き者相手では戦い倒すことも出来ない。
ギンが出来るのは、海燕を想い憂うルキアの側で、黙って寄り添っていることだけだった。
大きな湖を見下ろす丘で二人座りながら、夕焼けに水面を煌めかせる見事な空と水の調和に黙って心奪われる。
やがて、ルキアが小さな声で囁いた。
「・・・ギン。」
「ん?なに?」
「・・・もう少しだけ、こうさせていてくれ。」
それはもう少しだけ、海燕を想わせていて欲しいから?
そう考えながらギンは薄く笑って、ルキアを抱き寄せた。
「いつまでだってええよ。僕は、ルキアちゃんの側にいれれば、それでええから。」
「・・・すまない。」
消え入るような声でルキアは礼を言い、ギンに抱かれ瞳を閉じる。
やがて夕日は沈み、辺りは夜に覆われるだろう。
人里離れたこの辺は、月が出なければ帰り路もわからなくなる程、真っ暗な闇に沈み込む。
それでも僕は、きみの側にいつづけよう。
きみのことが、好きだから。
※修行その2。微妙にシリアス路線。最初考えてたのと全然違うものになりましたが、ちょっとだけいい話になったような・・・。あれ?そうでもなかったか?
2008.8.11