『 こコデ きす シて。 』

ここは三番隊の隊長室の中。
当然だが椅子には三番隊隊長、市丸ギンが座っている。
ギンはわざとらしく頬を膨らませ、顔を横に背けていた。
そしてその机を挟んだ目の前には、十三番隊の隊員朽木ルキアが目一杯迷惑そうな表情で立っていた。

「・・・ですから、あれは今度の行事について話していただけです。」
「嘘や!あんな楽しげに声上げて笑ってたやん!!」
「〜〜で・す・か・ら!あれは!過去に起きた行事にまつわるお話を聞かせて頂いて・・・」

ルキアは怒鳴りつけたいところをなんとかこらえ、先程から延々と同じことを繰り返し説明していた。

ギンがご機嫌斜めなのは、ルキアが他の男と楽しそうに語らっていた。

それだけの、こと。

確かに修平に呼び止められたルキアは、廊下でしばし談笑していた。
まさかそれだけのことで、仕事中に呼び出しをくらい、この面倒な男の機嫌を取らねばならないとは。

ルキアは怒鳴りたい気持ちと溜息をぐっと腹の底にしまい、出来るだけ事務的な態度を取ろうと必死になっている。

しかしギンは、その態度がまた気に食わない。

たしかに就業時間中ではあるが、仮にも恋人と二人でいるのになぜこんなにも他人行儀にされねばならないのか。

二人のお付き合いは当然のことながら周囲には秘密で、唯一知っている吉良の助けをかりてギンはわざわざルキアを呼びつけてきたのだ。

もう十分以上同じ事を繰り返させられたルキアの我慢も限界に近づき、声音も低くギンへ呼びかける。

「・・・市丸隊長。いい加減子供のような真似はおやめ下さい。私も忙しい身の上なんです。もう戻らせて頂きます!」

ルキアはそう言い捨てると身を翻し、隊長室の扉へ向かう。
しかしルキアは扉へたどり着く前に、ギンの胸にぶつかった。

「!!・・・こ、このような事に瞬歩を使われるのですか!」
「まだ帰ってええゆうてない。」

ギンはそのまま腕の中へルキアを閉じ込め、強く強く抱き締めた。
痛みにルキアが顔をしかめ、なにか言い募ろうとした時、ギンの方が早く言葉を紡いだ。

「そしたらルキアちゃん。ここで、僕にキスしてくれたら、戻ってもええよ。」
「!!・・・ば、莫迦なことを言うな!!!」

とうとうルキアは怒鳴りつけるが、ギンは一向に気にしていない。
返って普段通りのルキアの態度に、少々機嫌もよくなった。

真っ赤な顔でもがくルキアを楽しそうに押さえつけ、ギンは尚も詰め寄った。

「どうする?してくれんと、ずーっとこのまま終業時間まで抱っこしてても僕は構わんよ。」
「・・・・こ、このたわけが!!」

確かにギンならばこのままでも全く困りはしないだろう。

ルキアは仕方なく観念する。

「・・・早く顔を寄せろ。このままでは届かん。」

ルキアの言葉にギンは嬉々として顔を近づける。

ギンの顔が降りてくると、ルキアは一瞬触れるか触れないかのキスをした。

「・・・したぞ。早く離せ。」

当然だがそれで納得するギンではない。

「えぇ〜?!これだけなん?ほんまにこれだけ?」
「うるさい!したのだから文句はなかろう!早く離せ!!」

ギンはルキアの頬に手を添え上向かせると、悪戯っぽく微笑んだ。

「・・・しゃあないなぁ。やっぱりしてもらうより、してあげたほうがええみたいやね。」
「!!・・・ギ、ギン!貴様・・・ふっ?!」

ルキアは唇を唇でぴったりと塞がれ、言葉を喉に閉じ込められた。


隊長室の前では、恥ずかしそうな顔で吉良が誰も近づかないように見張りをしており、二人の秘め事はまだまだ時間がかかりそうだった。






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※修行その1。初SS。どうでしょう?今後もこんな感じで無意味にイチャつく小話書いていこうと思っています。
2008.8.9

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