奴の言葉は、嘘、ばかり。

 

何一つとして、真実がない。

 

なぜあれ程、嘘しか出てこないものか。

 

それは、驚きや呆れをも飛び越して、賞賛にすら値する。






『 千の偽り 万の嘘 』





「僕は、ルキアちゃんが、好きなんよ。」

「嘘だ。」

「ほんまや。ルキアちゃんの為やったら、なんでもしよる。」

「嘘だ。」

「命だって、惜しゅうない。」

「・・・・・しつこいぞ!つまらぬ嘘ばかり言うな!!」

 

言う事全てをけんもほろろに撥ね付けられ、ギンは大きな溜息をつき、眉を八の字にしかめ大袈裟な身振りで肩をすくめる。

 

「なんで僕の言う事、いっこも信じてくれへんの?」

「今までお前の言葉に、一片の真実があったことがあるものか!!」

「ひどいこと言わはるな〜。僕かて、たまには嘘つかん時もあるかもしれんよ?」

「それ自体が・・・・・嘘であろう?」

何を言っても堂々巡りの押し問答にギンは諦めたように口を噤む。
しかしルキアは強く瞳を怒らせ、夕刻の薄い闇を見透かし、目の前に佇む長身の男を仰ぎ挑むように睨みつけた。

 

沈黙の中二人の間でゆるゆると時間が過ぎさり、ふいにギンは口を開く。

 

「・・・・・僕は、ルキアちゃんが、好きなんよ。」

 

再び繰り返された言葉に、ルキアは反射的に両手で耳を塞ぎ、固く目を瞑ると絶叫するように力の限り大声で叫ぶ。

 

 

「嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!・・・・・そんな嘘を、私につくな!!!」

 

 

激しい拒絶に息乱すルキアの様子にギンは悲しげに笑いルキアから目を逸らし、斜め上に昇った月を見上げ独り言のように呟きを洩らす。

 

 

「・・・・・そしたらええよ。嘘でも、ええ。

嘘やから。全部全部嘘やから。

・・・嘘やけど、ルキアちゃんの事は、好きでいてもええ・・・?」

 

「・・・嘘しか・・・ない。お前の言葉には・・・嘘しか・・・・・・・・・・」

 

「・・・うん。そうやね。・・・それも・・・・・・・・・嘘。」

 

 

ルキアは、震えていた。

 

 

ギンから紡がれる嘘のひとつひとつが胸に刺さり、その痛みが悲しくて、苦しくて・・・・・・・・それなのに、嬉くて。

嘘で固められた言葉なのに、嬉しさに胸の奥が熱く疼く自分を抑えられない。

 

 

ここで落ちたら、私の負けだ。

これ以上甘い毒のような嘘に惑わされないようにルキアは強く耳を塞ぎ、寒さに震えているかのように小さく固く身を縮める。

 

 

「お前の口は嘘しか言わぬ・・・・・・最低の・・・嘘つきだ・・・・・・・!」

 

 

絞り出されたルキアの声までも震えている事にギンは気付かないフリをし近づくと、
目を閉じ俯くルキアの顔を上向かせ、嘘しか紡がぬその口で、ルキアの唇を優しく塞ぐ。

 

 

言葉に嘘しかないならば、この行動はどう説明してくれるのか?

 

 

突然のキスに驚き瞳を見開いた涙に潤む菫色の瞳としっかり見つめ合い、ギンは少しだけ口元を持ち上げ淋しそうに微笑を浮かべる。

 

 

「安心してや。・・・・・・・・これも、嘘やから。」

 

 

触れて知ってしまった唇の温もりに、ルキアの心は崩れ落ちそうになる。

 

 

嘘。

 

またも、嘘。

 

この男には、本当に嘘しかないのだ。

 

ならば、どこにある?

 

真実は、この男の心は、どこに?

 

 

いくら見つめても見えてはこないギンの心の行方を想い、ルキアの頬を堪えきれず涙が一筋滑り落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※イチルキ熱にしばらくお休みしていたギンルキ。
本当はもっとちゃんとしたものが書きたいのだけれど、イチルキ連載が予想外に長期ものになりそうで、半端にギンルキに手を出すことが出来なくなりました;;
他にも今年中にこなしたい野望も色々。時間があれば出来うる限り頑張ります〜〜〜;;
さて今回のこのショート作品。(タイトルは中の人繋がり、電Oでのウラの科白から。しかしうろ覚えなので間違ってるかも)
設定は一応原作沿い的にし、私にしてはできうる限りの描写を省き、ギンとルキアの揺れる心情を書き表す事に挑戦しました。
いつか来る別れを知っているギン。反発しながらも彼に惹かれ、しかし素直にはなれないルキア。
そんな二人の切ない恋心を、少しでも感じて頂ければ良いなと願って。
2009.10.24

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